大きな時計

                             高橋　禮子

　六回の四球押し出し一転が勝利の女神の決断ならん

　擦り抜けるごとくに買いたる焼きそばは何やらホームスチールの味

　今更と思うもやはりこの空気知ってよかった楽しく燃えん

　秒針の目立つ大きな時計ありスタジオ体験生まれて初めて

　本番のわたしをぶんせきするならば緊張無心そして集中

　私を写してくれた大きなカメラ見たはずなのに思い出せない

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　思いっきり薔薇

高橋　禮子

　萎むことなくわが夢逸だって膨らむ風船めざすは宇宙

　湖の底に落ちたる携帯電話しばらく何を語るのだろう

　如月の風のうわさを耳たぶにキャッチしました短歌これから

　作るのが好きなんですと添えられて届くゆずみそあつあつご飯

　辞めてより二年が過ぎるこれからはわたしが私を育ててくれる

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　 雫がはねた

高橋　禮子

　すばしこいあんたの便り消印をするりとぬけてまっさらさらり

　今という時は今しかありません雲よわたしも老化がこわい

　根回しは完璧ならんわが庭のあちらこちらにどくだみの起つ

　薬草といえども伸びるゆくどくだみは抜かねばならぬ先手必勝

　漁師には漁師の楽しみあるんです　式根の風が水戸にも吹けり

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　ふたつの花芽

                             　　高橋　禮子

　地震とは揺れるものなりしかれども揺れてはならぬ自信というもの

　短歌にもあるなら打たんホームラン響き迫力みんなの反応

　どちらでもよいのだけれど迷わずに買ってしまった瑕あるりんご

　文法に誤りありと言われても修正できない飛び出すことば

　踏み切ってしまえばこちらのものならん思いもよらぬ結果を得たり

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