遅咲きの梅


  ようやく、わが家の庭の梅の花が五分咲きになりました。今朝はメジロのつがいが、枝に挿したミカンを突いていました。ところが、それを見たムクドリがいきなり襲ってきてメジロを追い払い、我が物顔にミカンを食い荒らしています。
 思わず室内から睨んだら、こちらをじっと見てから嘲笑うような声を残して飛び去りました。
 今年はまだウグイスは姿を見せていません。ここのところ年々、ウグイスもメジロも明らかに姿を減らしています。その分、オナガ、ムク、カラスなどが増えているような気がします。
 わが家の梅は遅咲きですから、家で梅の花を眺める頃はコートを脱ぎます。
 ところで、私は長い間、梅はウメ科の植物だと思っていました。ところが、梅はバラ科サクラ属だと知って驚いたことがあります。
 何だか百獣の王のライオンがネコ科で満足しているのも不自然ですね。これこそ是非、ライオン科として独立してほしいものです。
 なんだか梅と桜は、ライオンとトラのような関係にも思えてなりません。お互いに自分の方が偉いと思っているらしく、両者は永遠に相容れないような気もします。トラとライオン、桜と梅、どちらもプライドをもって人々の注目を浴びます。
 いにしえの歌人は、花をよく詠みましたが、櫻より梅のほうが多く詠まれています。ならば、梅さんは胸を張って日本一を誇示してもいいはずですね。
 ところが、世の中そう甘くはありません。意外な伏兵がいるのです。
 万葉の昔から、和歌の世界では萩が梅を抑えて圧勝、秋の月と萩は春の梅と桜より強いのです。それでも、梅を詠んだ歌にはいいものがありますね。
 私の好きな歌もいくつかありますが、読み人は知りません。

 梅の花今盛りなり思ふどちかざしにしてな今盛りなり
 春の野に鳴くや鴬なつけむと我が家の園に梅が花咲く
 梅の花香をかぐはしみ遠けども心もしのに君をしぞ思ふ

 群馬県安中市に開運道講師の占術家(故人)がいて、近くの梅林に誘われたことがあります。安中市の北側に秋間川という清流があり、その上流の丘陵一帯に3万本を超える紅梅、白梅の秋間梅林があります。妙義山を眺めながら梅の香りを楽しむのはなかなか風流なものでした。
 ところが、その安中からほど近い高崎市の箕郷梅林は、東日本随一の規模を誇る梅林で約10万本だそうです。これからみたら約千本の越谷梅林公園や約5百本の湯島天満宮では規模で相手になりません。
 では、梅の名がいいし、有名ですが、残念ながら梅専門のウイルスで病に懸かり公園内の梅は一本残らず伐採されます。同じ病原体の梅ウイルスは、あちこちに飛び火して、ついに梅の聖地の水戸偕楽園にも被害をもたらしています。そのウイルスの蔓延をふせぐ唯一の方方が伐採では、櫻派の私としても悲しいことです。
 日本三大梅林といえば水戸の偕楽園、金沢の兼六園、岡山の後楽園だそうです。
 でも、梅は多ければいいというものでもありません。
 合格祈願の絵馬でいっぱいの湯島天神の梅もなかなかですし、福岡の太宰府天満宮、亀戸天神の梅も・・・ここで、はたと気付きました。梅の名所には学問の神様・菅原道真公を奉じる神社が多いのです。
、梅祈願=合格=サクラ咲く、と、桜はメールのお知らせ文面に登場するだけで、学問には何の役にも立っていません。もしかすると、梅を眺めると頭がよくなるかも知れません。
 そう思って、ウグイスの来ないわが家の五分咲きの梅を眺めています。やはり、小さな木ながらわが家の梅が一番・・・こう思いながら、です。