愚の一念!


お元気ですか?
台風一過、暑い土曜日を迎えました。
 私の生活の一部の鮎釣りも、7月の中旬からが本格的な盛期に入ります。
 鮎釣りというと一般にはどの河川も6月1日頃ですから、これからは残り鮎です。残り物には福があるといいいますが、私はまだ何の準備もしていません。以前は解禁前夜から河原でたき火をして・・・でしたが、今はその気もありません。
 釣り仲間からの誘惑にも、全く気が動かないのです。
 では、鮎釣りを辞めた? とんでもない、下手ながら鮎釣は私の生活の一部ですからやめる気など全くありません。
 8月中旬を過ぎると、追い気のある強い縄張り鮎は一通り釣られて塩焼きになり、魚影も薄くなり釣り人も激減します。
 その頃から私は竿を出して、もぞもぞと支度を始めてスケジュールを組みます。まだ一か月以上も先のことですから、慌てる必要はありません。
 熊本県八代市の釣友から「今年は鮎が少ないばってん、あまり釣れんで!」という朗報も入っています。
 釣友はがっかりした口調ですが、私は一瞬、「ヤッタ!」と心躍るのです。
 ホームグラウンドの九州球磨川(熊本県)の鮎は、極端に数が少ない年は大雨の後に暑く晴れた日が続けば驚くほど大きく育ちます。
 昨年は台風が多く餌のコケが少なく鮎が大きく育たず、ガッカリしたものです。河川条件が良好で魚影が濃すぎても、少ない餌場の縄張りを守るための闘いに明け暮れて餌を食む時間もなく餌も少なく鮎は大きくなれません。
 今年も今のところ台風の影響で川は増水し、弱い鮎は激流に流されて下流域に落ち。ますます残り鮎は少なくなります。この数少ない鮎が、天候さえ回復すれば広大な大河の縄張りを独占して良質の苔を存分に食べて巨大化します。鮎が少ないと釣るのには苦労しますが、掛かれば大きいはずです。
 炎天下の河原の石は火傷をするほど熱いのに、胸まで浸かった水流は体を快く冷やしてくれます。大鮎との遭遇をイメージして、川底の大岩を縄張りにする大鮎に向けて、大きめのオトリ鮎を刺客に送ります。自分の縄張りに侵入したオトリ鮎を見て、怒り狂った大鮎は猛然と体当たりして来ます。
 その結果、オトリ鮎に仕掛けた3本イカリが体に刺さって暴れ、流れに乗って脱出を図ります。なにしろ、オトリ鮎もまだ元気なら大鮎2体が一気に激流に潜って下流に走るのですから力比べになります。
 糸が切れないのを願って激流での大鮎とのやりとり、それを考えただけでも気が高ぶって眠れません。夜、眠れなければ昼間仮眠すればいいのですが、昼間はもっと思いが強まります。
 糸が切れないように太い丈夫な糸を使えば? これを試みて釣り人は値は高くても丈夫な竿を求めます。仕掛けが丈夫過ぎると、竿に負担が大きく掛かって、無理に頑張ると竿が折れます。
 そこで釣り人が竿を溜め乍ら一歩二歩から10メートルぐらいまで下がって、大鮎に対抗します。すると根負けした大鮎が抵抗を弱めますので、それを機に引き上げて手編に収めて万々歳となります。
 さて、こんな白昼夢を考えて毎日を過ごしていますが、8月末からはまた台風シーズンです。増水して濁流渦巻く球磨川では鮎は釣れません。鮎は海に下って姿を消し、私の1年も終わります。そうなると、こうして竿も出さずに1年を無為に過ごしての後悔と悲しみ・・・これを考えるとまた眠れません。
 大鮎じゃなくてもいいから、とりあえず鮎釣り、この誘惑に乗ると大鮎とは無縁になります。手頃な鮎なら関東近県のどこにでもいますし、そこそこは釣れるからです。それでもいいか、と、悪魔のささやきが・・・いや、やはり下手な釣り師の大鮎狙いで愚の一念、初志貫徹です!
 あれこれ考えて今日も寝不足です。