稀勢、破れたり!


優勝杯

 お元気ですか?
 私は仕事中は滅多にテレビは見ません。
 元来がテレビ好きで、ドラマ、映画、ニュースと何でも見ますが、目を患ってからはニュース以外はめっきり見なくなりました。
 それでも5月20日(金)の夏場所13日目の横綱白鵬と大関稀勢の里の全勝対決だけは仕事の手を休めてテレビ観戦でした。
 ここは何としても稀勢の里が勝って優勝への道を開き、場所後の横綱審議会の推薦で久方ぶりの日本人横綱を! です。
 館内の大部分は稀勢の里への声援で行司の軍配が返り、二人は闘志満々、真っ向から激突して、白鵬が右で張って右上手で左を差し、稀勢の里も十分の左四つで右上手を取り、どちらも充分に力を発揮、稀勢の里有利の寄りで土俵際、ここから白鵬が強靱な下半身で粘りに粘って回り込み、必死で発した逆転の下手投げ、これで稀勢の里が力尽きて崩れ落ち万事窮しました。
 私の見たところ、この戦いだけはお互いに小細工なしで、どちらも優勝争いにふさわしい気迫ある取り口で勝敗は、勝負への執念の差だけなのか、それとも実力差なのか? いずれにしても稀勢の里の白鵬撃破で横綱、の夢は破れました。ここまで順風満帆で連勝街道を突っ走ったきた稀勢の里にとって、白鵬はやはり大きな壁でした。これで稀勢の里が精神的に大きく後退したのは間違いありません。
 一方のにっくき横綱白鵬は勝って60本近い懸賞金を手に「相撲の神様が今日は私にほほ笑んでくれた」と、余裕のコメントです。
 なるほど、相撲の神様のえこひいきがが、優勝36度で横綱8年の白鵬と、まだ一度も賜杯を持ったことのない稀勢の里への差別だったのか、と妙に納得です。やはり神様は、そう安易に日本人横綱を作らず、モンゴル相撲を蹴散らす実力者が横綱になるまで「待て!」との啓示が隠されていたのかも知れません。そう考えると、もう稀勢の里や琴奨菊への期待は捨てて、じっくりと遠藤らの若手実力者が這い上がって来るのを待つしかありません。案の定、今日も稀勢の里は破れて優勝の夢も消えました。
 ところで、この場所で、旧友千賀の浦親方も定年退職します。
 日本相撲協会の定年は65歳、千賀ノ浦親方(元関脇舛田山)が師匠を務める千賀ノ浦部屋は、元小結隆三杉の常盤山親方(55、貴乃花)が継承することになりました。千賀の浦が所属する出羽海一門の内外に継承する部屋がなく、合併話はあったが力士の混乱を避けるため、親方同士が気心の合った間柄で話がまとまったようです。引退する千賀ノ浦親方は再雇用制度を利用して70歳まで「常盤山」の名跡で部屋の後見役で残ります。いわば元隆三杉と親方名交換です。
 ともあれ、部屋を引き継ぐのが貴乃花一門の親方ですから、これからは春日の部屋の分家であった千賀の浦部屋の譲渡先を考えると、千賀の浦後援会の私としては、元栃錦系から元若乃花系へと真逆の大転換になるわけです。旧態依然とした相撲界でこんなことが現実に起こりうるなんて青天霹靂の出来事、全く信じられない奇跡です。これも水面下で相撲界の革命児・貴乃花の意向が動いているのかも知れません。この29日(日)千賀の浦親方定年を祝う会の席でそれらの疑問を聞いてみたいと思っています。