猛毒化学兵器・VX


 

2月13日に発生したマレーシヤでの金正男(キム・ジョンナム)氏毒殺事件は、24日の警察発表でVXと呼ばれる、過去に知られたサリン以上に猛毒の国連禁止化学兵器の使用と判明し、また新たな波紋が広がっています。
この薬物は、国連安保理決議687号で大量破壊兵器に分類されていて、国際的にも化学兵器禁止条約で製造や流通が禁止されている猛毒性物質で、いま世界で知られている薬物では最も危険な有毒神経刺激剤制で、微量のVXに触れただけで人の命は数分間で奪われます。
では、なぜ金正男氏の顔に素手で薬剤を塗った容疑者の女二人が死亡しないかというと、それぞれが別の未完成薬剤を手に塗って、金正男氏の顔の上で塗りたくってVXを合成させたからと推察されます。その証拠に先に顔から手を放した女性は比較的敬称で、後まで顔に触れていた女性は、完成に近いVXに触れたことによって今も瀕死の重傷であることでも理解できます。
国際的な情報では、この0,2グラムで人を殺せる猛毒のVXやサリンを、北朝鮮は化学兵器として2500~5000トンを貯蔵していると推定しています。単純計算で、5000トンあれば2億5000万人は殺戮できることになり、ミサイルなしでも近隣の国を抹殺できることになります。
腹違いの弟が兄を殺すという人道に反した行為は、日本の中世から戦国時代にかけてはないこともありませんが、対立もしてもいない無力の兄を「存在が邪魔」というだけで暗殺するなど、現代社会では許されるべき行為ではありません。これで北の将軍様は墓穴を掘ったのは間違いありません。この金正男暗殺日からは、自分自身が側近からの暗殺または軍部クーデター、さらには国民革命による殺害などの悪夢が現実になる日へのカウントダウンが始まったことに気づくべきです。今からでも、拉致問題や核軍拡などの国際的な批判に耳を傾けて、対応を改めて周辺国と共存共栄に発展すべく努力して国際社会に名を残し、「ノーベル平和賞」を頂くように豹変すれば君子になれます。
半世紀以上のひと昔前、「地上の最後の楽園」という謳い文句で日系二世などを呼び戻した時期があり、誰もがそれを信じました。
その実態は、皆さまご承知の通りです。
話は、化学兵器VXからサリン・・・オウム真理教なる犯罪集団の犯した地下鉄サリン事件に向います。
平成7年(1995)3月20日のことでした。
私は朝、埼玉県の栗橋からの通勤で北千住経由で銀座線で自分の事務所(当時は銀座)に出勤、その途上で事件を知りました。
事件発生は午前8時頃、地下鉄丸ノ内線、日比谷線、千代田線の乗客や乗務員、築地駅の駅員などが原因不明の薬物らしきものに被害にあって死者も出ていて交通網は寸断、いずこもパニックとの車内放送でした。
事務所に飛び込むとすぐ、ソニー製大型撮影機を担いで相棒のM氏(同年の釣り仲間で元化学工業系新聞社出身)と走って築地駅に駆けつけ、消防隊が運び出す毛布を被った被害者や死体を撮ったり、青い顔の被害者からコメントをもらったりで大忙しでした。
オウム真理教は、坂本堤弁護士一家殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件と三つの許し難き大きな犯罪事件を犯しています。
私は当時、米沢新聞東京支社長で、2ケ月前に阪神神戸大地震で折り畳み自転車寝袋で泊りで燻っている焼け跡から出た死体も見慣れて腹は据わっていましたから、悲惨な思いと戦場にいるかのような高揚した気分で取材し、地方の小新聞に余分な原稿を送って紙面を割かせたものでした。
その時にオウム真理教が用いたサリンが、今回のVX同様に悪魔の薬剤だったのおです。
その他にも、池田大作サリン襲撃未遂事件、滝本太郎弁護士サリン襲撃事件も引き起こし、その上、化学兵器によるクーデターで日本を乗っ取る計画だったそうですから、そこまで取材をすると、朝廷はともかく、衆参両議院、政財界や自衛隊、警察をはじめ、各地行政への根回しが何ひとつ出来ていないことから、単なる妄想集団の反社会行動犯罪としか映らず、何ら同情も弁護の余地も考え付きませんでした。
事件発生後の8時10分過ぎ頃から日比谷線は、あちこちの駅で乗客が倒れはじめ、また運転士も以上に気付き、築地駅と神谷町駅で緊急停車、各駅の車両が停まって、あちこちで被害が拡大したものです。
被害者を大量に運び込まれた築地の聖路加国際病院では、医師にとって未知の現象ながら農薬の有機リン系薬剤中毒に似ているとみて、それに対応するPAM(プラリドキシムヨウ化メチル)を薬品問屋に緊急要請します。ところが、首都圏には農薬対応の薬品在庫はどこにもありません。そこで全国の病院や製薬会社から、新幹線駅渡し、自動車便などでかき集めました。これで一気に被害者の症状が好転するはずでした。ところが、症状は悪化するばかりです。私もM氏も化学畑の出で毒物劇物取扱責任者ですから、農薬中毒の対症法ぐらいまでは知っています。しかし、農薬にしては被害者の苦しみ方が異常なので、「これは化学兵器だな」までは取材で見当はついたのですがサリンまでは知りませんでした。
その惨情をテレビで見た信州大学医学部附属病院第三内科の柳澤信夫教授が、被害者の症状から前年に発生した「松本サリン事件」の被害状況と同じことに気付き、その対処法を東京の該当する病院にファックスですぐ伝えたことによって、すぐ適切な治療ができるようになったのです。それによると、有機リン系農薬中毒の治療には必要なPAMなら1日2本で済むが、サリンの治療には1時間1本、24時間対応で24本必要であることが分かったのです。
そうなるとPAMが大量に不足します。そこで、陸上自衛隊保有の化学兵器用対策ストックPAM2,800セット、さらに、農薬製造の住友化学が農薬解毒用に製造所持していたPAMを大量に提供してもらって急場をしのいだのですが、北朝鮮が、サリン以上の猛毒VXを5千トンも所持していることを考慮すると、各家庭が家族救済用のPAMを用意するしかありません。これはもう他人ごとではありません。私達は知らぬ間に戦時体制のワナに嵌っているのかも知れないのです。
なお、松本サリン事件は、死者8人、軽・重症者660人。地下鉄サリン事件は、死者12人(13人とも)、軽・重症者6,300人。
その他に弁護士一家殺人事件や身内での殺人事件が多発していますが、もう書く気にもなりません。
小説にと考えて細かい取材も終えていますが、ただ、麻原彰晃被告の死刑執行を引き延ばしている政治的理由だけは図り知れません。