蔵書の終活


仲間と語る話題をここに載せたいのはヤマヤマですが、それは成りません。
昨日4日(土)もそれで危うく失敗をやらかすところでした。
テレビや新聞でトップ記事になる政治絡み問題を語るのは相手によりけり、それを忘れていたのです。
昨日、うっかりしてラジオの持ち番組で、いま話題の森友学園の話題から入ろうとして、スタジオの相棒キャスターから阻止されました。
それも当然、安倍総理の地元メディアですから、触らぬ神に祟りなし、で、余計な一言でモメるのは「ご免!」なのです。
私は何ら影響ありませんが、キャスターが一緒になって相槌を打っていたら番組終了後に「時事番組じゃないぞ!」ぐらいは言われます。確かに占い番組なのに日頃から話題が飛び過ぎていると少しは反省しています。いくら私とはツーカーのベテランキャスターでも避けねばならない話題もあることにもっと早く気づくべきでした。
ともあれ私も阿吽の呼吸で、我が家の「梅にウグイス」へと無難に話題を切り替えて番組はいつも通りのハッピーエンド、やれやれです。
でも、これで安倍総理がかなり神経質にマスコミに手を回しているのを感じました。これはもうグレイより黒に近い様子です。
だからといって、築地の駅前にいて仲間に寿司屋の店長がいる立場では、築地の裏話もうっかり出せません。そこで今日のこの場は無難に本の話題、それも「ツンドクブック」、いわゆるデッドストック本の始末不始末の話です。
NETで知ったのですが、岡山県高梁市教育委員会支援の民間運営図書館が、高野山大名誉教授故F氏のご遺族から寄贈された1万6千冊余の寄贈本をダンボールに入れたまま約10年間保管した結果、職員不足や書庫の制約などで活用できず、ついに貴重な一部の書籍を除くほぼ全ての書籍を廃棄処分に決定しました。驚いたご遺族が返却を求めて、今は故人のご実家に保存されているという話題です。
この話はどちらも万々歳とはならず、深刻な問題が残ります。しかも、これは他人ごとではありません。明日は我が身です。
ご遺族としては「市民のお役に立てず残念!」と同時に、大量の本の置き場にお困りのはずです。
図書館側も残念なはず、なにしろ内容が、万葉集、地元の儒者・山田方谷関係書籍、源氏物語、チェーホフ全集、古典、国文学、外国文学のほか、絶版になった哲学や仏教の専門書など貴重な本揃いで、それぞれの関係者から見れば垂涎の的になる蔵書です。
図書館の立場も無理はありません。図書館の収納限界は7万冊でFさんの蔵書が届く前から満杯。では、ご寄贈書籍はどうしたか?
検索出来るようにして図書館から8キロ離れた廃校になった高校の体育館に保存し、必要に応じて職員が取りに行く予定でした。しかし、人手がありません。それに、こちらの図書館の来場者数が半端ではありません。一日2千~3千人とべらぼうに多いのです。
さらに、貸出図書用の表紙のコーティングやタグの装着にパソコン処理などの費用が一冊約200円、1万6千冊で約320万円、それに書庫が要ります。人もお金も物も予算外・・・で、ダンボール保管のやむなきに至ったものと推察します。
私の親しい知人では、元中央公論社の婦人公論編集長だった故M氏、武蔵野大学学長だった文芸評論家の故O先生、現在は高給高齢者施設に入居している元文芸春秋社社長のT先輩、この3人の書籍持ちが前記のFさん以上の書籍持ちで、その処分に苦慮されていました。
M氏はJR目黒駅南口から数分の好位置に広い庭付きの6階建てマンションを持ち、私も仲間の集会用に一部屋借りていましたから、そのマンション地下にある図書館兼書斎はいい喫茶室になっていました。
早稲田大学教授だったM氏の父親は、シルクロード研究の権威で、その関係の蔵書もかなりありますが、本人(故M氏)が自社から発刊される書物を運び込む上に、知人友人から寄贈される本で書庫は超満員、顔を見る度に「持ってってくれ」です。
私が今になって後悔しているのは、たった一冊の和とじの古書です。それは、故M氏の祖祖父の日記で、高杉晋作と上海に行って、ピストルを一緒に買った話が載っていたのです。その高杉が買ったピストルが坂本龍馬に渡った可能性もあり、その本を「くれ」と言ったら貰えただけに残念です。それがあれば、龍馬研究家の小美濃清明講師の書きネタが一つ増えたのにと、それも残念です。
その替わり、中央公論社発刊の「歴史と人物」だけは古いのから全部頂戴していましたから、創刊号から全巻揃っています。残念ながら、大出俊幸元社長の新人物往来社「歴史読本」に撃沈されて廃刊になりましたが、筆者も内容もさほど差はありません。今の私には手元にある「歴人」も「歴読」も仲良く役立っています。
武蔵野大学(前武蔵野女子大学)元学長で三等叙勲の文芸評論家O先生宅の地下書庫も圧巻でした。M氏宅地下書庫が雑然としていたのに比して整然ととしていて、しかも高価な有名作家の初版本ばかりがズラリ・・・地方の図書館など足元にも及びません。文芸評論家のO先生が、ご自分の主刊する同人誌で一言でも新人の文章を取り上げると、その文筆かはたちまち注目されますので、全国の同人誌が発行される度に送られてきます。本人は、私と銀座でコーヒーを飲んで無駄話をしていたりしますから同人誌に目を通す暇などありません。
家に帰って気が向いたら適当に、ひょいと送られていた同人誌を手に取ってパラパラとめくり、2,3人の文章に目を止めて、メモ帳に何やら書き込み、それで作業は終了、ものの5分も掛かりません。それでいて、あとで文章をみますと流石に文芸評論家、しっかりとツボを押さえて毀誉褒貶を相手に伝えています。こればかりはなかなか出来ません。
晩年、胃を手術した上に糖尿病でかなり重症でしたが講演が多く、私が運転手兼ピンチヒッターで温泉泊まりの地方講演によく行きました。主催者には、万が一、途中で講師がダウンしたら、文学論から易占の講演になるが「いいか?」と言うと、殆ど「それもお願いします」と言われますが、私は当然固辞します。文藝論より占いの話のほうが面白いに決まっているからです。
故人にはなられましたがO先生、いまだに開運道「日本文芸学院」の名誉会長です。たまには見てください。
M氏、O先生の書庫は数万冊でしたが、文芸春秋社・元社長のTさんの貴重な蔵書は10トントラックで神保町の古本屋に引き取られたそうです。Tさんの自宅二部屋ぎっしりという蔵書には処分したくないものも沢山あったはずですが、奥さんに先立たれて子供もなし、終活を考えての決断で、自宅を処分して高級老人施設に入居したのですが、その選択が良かったのか悪かったのか、いまだに悩んでいます。
このTさんと一番親しい友人は開運村の癒しの部屋「佐藤堅太郎・旅の絵日記」でお馴染みの佐藤講師です。
さて私・・・週末は孫など泊り客がいると狭い書斎で雑然とした本と鮎道具に囲まれてのんびり仕事、誰もいないと目の前10メートル近い細長空間のだだっ広い「戊辰」専用書斎でのんびり仕事、今日はこのパターンですから、これから「戊辰」に掛かります。