落し穴


 落とし穴

花見 正樹

私はいま82歳、ストレスについても学び、人間関係も含めて全てが順調・・・こう思っていました。
ところが最近、この考えの中にとんでもない「落とし穴」があったことに気付いたのです。
私は若い頃、人の好き嫌いが激しく感情の起伏が大きく、人間関係の好き嫌いも激しため、会社勤めも長続きせず、転々と仕事を変えた挙句、自立するしかないと覚悟を決め、的を絞って簿記を学び化学系学校に通い、必要な国家資格は全て取得し、勤めていた化学工業薬品・染料販売店から独立して今日に至っています。
その間、趣味でさまざまな道楽を重ね、自分なりに極めたつもりだったのが「占い」「ストレス&脳波」「整体」です。その占いには「人相学」や「相性」があります。
私は今まで長い間、誰とでも笑顔で接していましたが、ごく最近になって「人の好き嫌い」が、若い時のようにハッキリと姿を現してきて、我ながら修行の浅さと悟りの脆弱さに気付き、その突然変異に困惑しているところです。
「年をとると子供に還る」という俗諺にも今は納得、なんだかメッキが剥がれた感じです。
そこで、ふと気づいたことがあります。それはここ十年ほどは苦手な人とは交流せず、気の合う人とだけ付き合っていたのでは? と気づいたのです。
だから、不快な思いも対人ストレスもなかった・・・それが最近、我が家(事務所兼サロン)を解放したことによって否応なしに、いろいろな人達が出入りするようになったのです。
私のサロンでは、年に何度か隠居の集まりがあり、常連メンバーの高齢女性の同級生などという胡散臭い男も紛れ込むこともあります。
わずか数時間ですから我慢はできますが、最近はこの我慢自体がバカバカしく思えて来たのです。かといって、他人を集めておいて、ストレスになる人がいるからといって自分だけ帰宅する訳にもいきません。
今までは自分と合う人以外は招かなかった私の誤りが、私を「人の好き嫌いがない」かのように振舞わせていたのですが、これは真っ赤なウソ、本当の自分はかなり人の好き嫌いが激しいことを、最近はイヤというほど自覚させられています。
ごく最近、前述の知人の同級生以外に、人柄はいいのに得体の知れない気味悪さを感じたことがあり、自分の人間としての未熟さを思い知らされました。
勿論、そんな気持ちはオクビにも出さず、人前では笑顔でいますから私の内面を見透かす人はいませんが、また同じ人物と会う機会があるとしたら、今度は帰宅しての自宅仕事、と、心に決めました。もう、我慢しての義理付き合いはしない、これも開運の極意です。
人間関係では気(波長)の合わない人は必ずいます。それが会社の上司だったら悲劇ですね。しかし、相性診断の専門家である私でも、このような矛盾を抱えているのを知ったら、少しは気が楽になりませんか?
今まで永い間忘れていた人間の好き嫌い感覚を再発させてしまった私、これからが思いやられます。
これはもう、突然、思ってもいなかった「落とし穴」に嵌ってしまった、そんな気分です。