月別アーカイブ: 2019年9月

国際的な夫婦共作共演レコード-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

国際的な夫婦共作共演レコード-1               一

 そんな不安定な情緒のなかでも、新婚旅行中に妻は一大事業をやりとげた。二人は心を一つにして協力したのである。パリで当時二年前からレヴューに長期出演していたリーヌ・ルノー(戦後最高のレヴュー警)と出会いのチャンスがあり、リーヌの提案でとつぜん彼女と私がデュエットでレコードを吹き込むことになったからである。自分がアメリカでディーン・マーチンとデュエットして成功したから、日本人のアシノともデュエット盤を出したいというのである。曲目はリーヌのご主人ルル・ガステからの新婚祝いのプレゼント曲「モナムール(私の恋)」と、カジノ・ド・パリのレヴュー『愉楽(プレジール)』の主題歌であり、いちばんヒットしている「いつの日かパリに」の2局ではどうだろうということであった。
その自のうちに大筋がまとまり、翌日から準備にとりかかった。しかし、私たちが新婚旅行でヨーロッパに滞在するのは約一か月であり、その間にスイスの観光も考えていたから、ちょっと忙しかった。いちばん困り、そしてあわてたのは、リーヌがどうしてもワンコーラスを日本語で歌いたいといい出したことである。今のようにファックスがあれば、あるいは日本語の作詞家に頼み込んで間に合ったかもしれないが、当時はまだまだ日本は遠い国であった。
仕方なく妻と二人で考えることにして、ジュネーヴ行きの夜行列車に乗り込んだ。辞書を片手に原語の歌詞をいちいち直訳して日本語に直すのは彼女の役である。大学で日本文学を専攻していたのだから、心得がないわけではない。しかし、いつまでも残るレコードのことだからいいい加減なものはできない、とたいへんな思いであった。
歌いやすくて、イントネーションを調えて意味がわかって、となると夫婦二人で夜中までかかって協力し合い、推敲しなければ良いものができない。スイスの観光旅行はそんなことに明け暮れして、再びパリに戻ったのだった。


ハネムーン・エピソード-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

ハネムーン・エピソード-3

 当時、早稲田大学、日本女子大学、慶応義塾大学などにそれぞれシャンソン研究会と称するサークルがあり、それは現在も続いているらしいが、戦後のあのシャンソン・ブームのころ各校が競い合ってシャンソン・コンサートを企画し、私もそのターゲットにされて引っ張り凧であった。
そのような積極的なファンに囲まれていた私の前に、すべて控えめな彼女の態度は特別に光り輝いて、私はひと目で彼女が好きになった。というより、これは前世からの赤い糸でつながっていたとしか考えられない。六月十八日に生まれた私と、彼女の父の誕生日が同じであるのも不思議だし、私の母と妻が十一月生まれで、母は彼女を見たとたんに、これは宏の嫁になると直感したという。
こんなふうに皆から祝福されて結婚したのに、外国に出てたった二人きりになってみると、わがままが出てくる。彼女がいちいち私の行動を束縛し、自由を奪うような気がして腹が立ち、ハイドパークを散歩しながら、酒落のつもりで木陰に身を隠した。ハイドは隠すという意味があるからである。私も若かったのだ。彼女は迷子になったと思ってホテルに戻り、通訳の人とロビーで私を待っていた。
半分冗談のつもりでやったことが彼女にとってはこたえたらしい。それ以来、ロンドンやパリでも小さな夫婦げんかが続いた。しかし、やっとめぐり合った二人はお互いに憎み合うような、顔を合わすのも嫌なほどのけんかはせず、すぐ仲直りをした。が、それでも二人は深刻に悩み、お互いににいらいらしていた。じつは、帰国してわかったことだが、彼女は妊娠していたので、精神的に不安定だったのである。二か月にわたるヨーロッパ旅行を終えて、羽田に到着したとき、彼女は流産したのである。無知の悲しさで、ほんとうにかわいそうなことをしたと後悔している。

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日本シャンソン館の新着情報
9月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
9月15日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代
9月16日(月) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:安藤伸彦
9月21日(土) 11時~/14時~ MIKAKO      ピアノ:中野宏美
9月22日(日) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:大美賀彰代
9月23日(月) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:江口純子
9月28日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:大美賀彰代
9月29日(日) 11時~/14時~  岩崎桃子      ピアノ:日野敦子

10月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
10月4日(金) 10時30分~ シャンソンの花束 -日本シャンソン協会福山支部ツアー-
10月5日(土) 11時~/14時~ MIKAKO      ピアノ:大美賀彰代
10月6日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:江口純子
10月12日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野敦子
10月13日(日) 11時~/14時~  岩崎桃子      ピアノ:日野香織
10月14日(月) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安藤伸彦
10月19日(土) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野香織
10月20日(日) 未定 原れい子カルチャー教室発表会
10月22日(火) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
10月26日(土) 11時~/14時~ フレンチカフェ ~Keiko&美鶴~
10月27日(日)
バニョル エ シャンソン
‐車とシャンソン‐ 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:大美賀彰代

11時45分~/14時45分~ 【野外ライヴ】
ジプシーヴァイオリン:古館由佳子
アコーディオン:オラン平賀康子

日 時

2019年10月27日(日)
日本シャンソン館主催
第7回 フランス車 オーナーズ・ミーティング
バニョル・エ・シャンソン
(裏面) 入館料
大人1,000円   小人 500円(中学生以下)
フランス車オーナー900円(ご同伴者様も割引適用) +ステッカープレゼント♪
【本館】
シャンソンライヴ(2階 シャンソニエ 「ヴェルメイユ」)
出演:小林美恵子、ピアノ:大美賀彰代
時間:11:00~/14:00~
ライヴチャージ:500円(二公演共通/入館料別途)

野外ライヴ
出演: ジプシーヴァイオリン:古館由佳子
アコーディオン:オラン平賀康子
時間:11:45~/14:45~
*入館料のみでお聴きいただけます*
【中庭】
フランス車展示
シトロエン社 2CVフルゴネット(AKS400)

フレンチ・アンティーク・マルシェ
ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ブロカント“ユイット” (フレンチ・アンティーク雑貨)

【ショップ 「ラ・ファミーユ」】
2CVグッズ(ショッピングバッグ、ミニカー…他)

【カフェ 「ロゾー」】
特別販売 フランス菓子 ミヤケ 「かぼちゃのプリン」 ※当日限定

主催:日本シャンソン館
協力:双葉自動車
後援:一般社団法人 日本シャンソン協会/群馬テレビ/上毛新聞社/エフエム群馬

フランス車のオーナー様ではない方も、是非お越しください!!

2019年9月23日(月)
小林美恵子
バースデイ・ライヴ
ピアノ:江口純子
時間:第1回公演/11:00~、第2回公演14:00~
会場:日本シャンソン館2Fシャンソニエ「ヴェルメイユ」
料金:入館料 大人1,000円、小人(中学生以下)500円
ライヴ料 500円

どなたでもお聴きいただけます。どうぞお出かけください♪

*水曜日休館*
〒377-0008 群馬県渋川市渋川1277-1
TEL:0279-24-8686 FAX:0279-24-1919
営業時間 9:30~17:00
E-Mail:bureau@chanson-museum.com

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ハネムーン・エピソード-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

ハネムーン・エピソード-2

 また、前大蔵大臣で当時の総理大臣・池田勇人氏も祝福のメッセージと記念の陶器を届けてく
ださり、今も大切にしている。駆けつけてくださったNHKの藤倉修一、高橋圭三の両アナウンサーや、藤原あきさん、佐藤美子さんほか、芸能界名士からも祝辞をいただき、東芝レコードからは野上彰先生作詩の「祝婚歌」が贈られ、作曲の大中恩氏が指揮して東京放送合唱団がこれを歌って祝福してくださった。高さ二メートルのウエディング・ケーキの前で、私は「幸
福を売る男」を歌って、皆様にお礼の挨拶をした。
すべてが夢のように輝き、五月の太陽がキラキラ光っていた。
エールフランスが、マンチェスター航路の開通を兼ねて、私たち二人に往復航空券をプレゼントしてくれたので、新婚旅行はロンドン、パリ、ジュネーヴとまわった。
新婚生活はロンドンのハイドパークに面したドーチェスター・ホテルから始まった。
ここで私たちは初めて夫婦げんかをした。婚約期間が半年以上もあったのに、デートはいつ見られていたり、第三者が介入していて、二人きりの付き合いはなかった。
外国に来て初めて二人になると、良いことも悪いことも目につき、鼻についてくる。
私は末で甘やかされて育ち、歌手になってからは付き人やファンたちに囲まれて異常にわがま大事になっていた。妻はたった一人の兄が生まれてまもなく亡くなった一人娘で、大事にられたお嬢さんである。ただ、彼女の場合は四年間、日本女子大学の寮生活をして親元を離れた経験があるのでよかったと思う。
じっは、私の長姉が日本女子大学で講師をしていて、真面目で評判の学生を私に紹介したことから、私たちのお付き合いが始まった。


ハネムーン・エピソード-1

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

ハネムーン・エピソード-1

 昭和三十五年(一九六〇)五月に私がパリでのレコーディングを終えてからちょうど1年たった昭和三十六年五月八日、私は羽鳥房江(由希子)と結婚式を挙げた。遅い結婚であったが、ようやくたどり着いたという感じである。なぜならば、デビュー以来仕事の忙しさは論外で、母などはマネージャーをうらみ、「うちの息子を働かせすぎないでください」と電話までしたほどである。とても結婚生活など考えられない毎日であった。1年に250回もの地方公演と、テレビが多いときで週に五本、ラジオのレギュラーが週に三本といった調子である。このまま結婚したら、うまくゆかないのは目に見そいる。私が世界旅行をして三か月間、日本を留守にしても、音楽事務所がなんとかやっていけそうなので、結婚を機に少し仕事を減らそうと考ぇて菊池維城氏にもそのように伝えた。
五月八日は夜来の雨も昼過ぎにはすっかり上がり、青空が広がって新緑が美しく目に沁みる素晴らしい日であった。場所は、いま庭園美術館になっている芝の迎賓館である。挙式のあと約五〇〇人の客を招待し、広い庭園の中に模擬店を出してもてなした。仲人は、私がデビューのときレコード会社の対立で苦労した経験があるので、音楽畑の先生は故意に避け、学生時代からお付き合いのあった画家の東郷青児ご夫妻にお願いした。
一人娘のたまみさんに学生時代に家庭教師として音楽を教えていたので、快く引き受けてくださった。
披露宴には、妻の実父・羽鳥久雄が銀行家であることから、当時の大蔵大臣・福田剋夫先生が、実業界からも鹿島守之助ご夫妻が出席してくださり、なかなか盛大なパーティーになった。