第十一章 生田原町

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37 イベント企画

ソバが来て話題がと切れた。
ワサビだ」「唐辛子をよこせ」だのという言葉のほかは、ズルズルとおいしげに口に運ぶ音だけが、富橋家の応接間兼来客用の食堂にひびく。打ち立てのソバだけは一気に食べるにかぎる。
「おいしかったわ。ごちそうさま」
「あゝ、うまかった」
メガネの下の目を細めて若葉が満足気にハシをおき、信二もすっかりくつろいでいる。
「やあ、満腹だ。奥さん、いつものコーヒーを頼みますぞ。ソバも旨いが、奥さんが喫茶店を開いてたころからここのコ-ヒ-は最高だからな。しかもタダだ。さて、テレビでも……」
町長が勝手に、リモコンを用いてテレビをつけた。
CMが終っていくつかの話題のあと、事故のニュースが出た。
「昨夜遅く、網走市大曲の展望台下に乗用車が転落しているのを通行人が発見し、警察に通報しました。車はすでに炎上しており、拳銃一丁と男性二人の焼死体が車内から発見されております。
警察の調べでは、事故は昨夜七時過ぎに発生、現場には霧が深く立ちこめていたという地元の人の証言から、運転を誤まって転落したものとて死体の身元を調査中です。また、車のナンバ-から所有
者が、暴力団関係者と判明し、死亡者との関連を調べています」
「まったく道東も事件が多くなった」
町長がコーヒーカップをテーブルにおき、チャンネルを変えた。
スタイルのいい歌手が、オーバーな振りをつけて歌っている。
「おっ。若葉ちゃんだぞ! いいねえ」
歌声が小さくなり、ナレーションがかぶる。
「スイ星のごとく現われて、体調を崩して電撃引退、夏の夜の花火の如くうたかたの夢と消えたスーパー歌手小森若葉は、今、いずこにいて療養中なのでしょうか。彼女が生んだ数々のヒット曲は、衝
撃的な引退を契機にいずれも全国で販売数が激増し、品切れが続出していて、アルバム入りの全曲がヒットチャート上位を独占する勢いとなっております」
「うちの孫が若葉ファンでね。またCD買わされたんだよ」
ふと、町長が若葉を見つめた。
「あんた。ちょっとメガネ外してみてくれんか」
若葉がためらいながらメガネを外す。
「おっ。似てる! これでちょっとメイクして歌に合わせて口パクやってくれりゃあ、日の光学園の子供達大喜びだぞ。おい。ここのカアちゃんの若い頃の衣装か、今、ロスへ嫁いでる娘が残してった
洋服で、この娘に着られそうな派手なのないかい?」
「町長、なにを考えてるの?」
さすがに富橋の妻もあきれている。
「面会日の日曜まで待てないだろ。わしの権限でも平日の自由面会は無理だからな。ましてや父親は死んだことになってるんだぞ。だから、施設の子供達にアイスクリ-ム付きで、小森若葉のソックリ
さんの歌をプレゼントする。なにしろノルディックファームのアイスとならるとあの小うるさい園長だってすぐとびつくからな」
信二が渋った。
「無理しなくていいです。それにこの娘も歌は苦手です」
「いいえ。お子さんに会えるならやります。口パクでフリぐらいなら真似ぐらいできます。歌はあるんですか?」
若葉が積極的に応じた。これなら敵を呼ぶことができる。
「やる気になってくれたか。カセットでもCDでも、わしの車に入っているぞ。孫が乗るとうるさいもんでな」
「本気なの?」
富橋の妻が心配する。
「善は急げ、歌は急げだ。さっそく手配しなきゃあな」
気が早くて決断が早い。役場へ電話を入れ、助役を呼び出す。
「企画振興課の近東主任に指示して子供たちを動員させろ。午後四時から五時まで、伊吹の牧場で歌のイベントをやるぞ。入口のテラスを舞台にしてな、そこで小森若葉のソックリさんが歌う。歌を流
すだけだから、大ゲサにはするなよ。ま、日の光学園の子供達だけじゃもったいない。幼稚園、保育園、小、中学校にも動員をかけろ。それと企画課長たちにマイクとアンプを運ばせとくよう伝えてく
れ。使うのはカセットでいい。日の光学園の子供達だけを早く呼んでアイスをおごるからな」
続いて、日の光学園に電話を入れて説明する。
「な、そういうわけでノルディックファームのアイス付きだ。安本ヒトミちゃんて子だけ、なんか目印をつけさせてくれ。ハマナスの花を胸に? しゃれてて、いいアイディアだろ? なに? アイスはダブルだ? だめだ、町の予算の関係でシングルだ」
相手がなにかわめいている。
「なんだと、役所の建物やノースキングの温泉会館、それに文学館が町の規模にしちゃ立派すぎる? あれとこれは話は別だ。分かった仕方ねえダブルでいいよ。全員に好きなアイスを二つ重ねでもら
っていいと言っといてくれ。もちろん特別に先生方もだ」
また、役所へ電話している。
「日の光学園のアイスの予算を増額するから、出納課長に臨時支出を頼んどいてくれ。イベントのギャラ? それはいい。ちょっと歌手のマネをやってもらうだけだからな。四時からスタ-トだぞ。なに? 企画課長と近東主任がもう大騒ぎで動いてる?」
町長は、自宅に電話をかけ「孫を連れて行くぞ」と妻に伝えて、そそくさと帰って行く。意外にお祭りごとが好きらしい。
「カズミさん、大丈夫か? わしら夫婦も行くんだからな。ヒトミがふっとんで来る。歌う前にご対面できたら、止めていいよ」
「でも、子供たちが喜んでくれるならフリぐらいします」
富橋の娘の衣装が見つかり、身につけるとよく似合う。
やがて一行は出発した。湧別川に沿った道が遠軽町内で、白滝村から北見峠を経て旭川へと続く国道三三三号線へと進み、道が別れて生田原川沿いの二四二号線を走る。安国、生野の集落を過ぎると
「ヤマベのすむまち」に入る。
勝子が助手席で町の解説をする。
「生田原なんて人口三千の小ちゃな町なのに、なんだってあるんだから。さっき安国って駅の入口あったでしょ。ピノキオハウスっていうのは木のおもちゃで遊べる木工機械室なの。あとは多目的ホー
ルなんかあってぜいたくなんだから。スポーツセンターからなにから中都市並みの近代設備のほかに牧場もあるんですからね」
富橋がうらやましそうに補足する。
「町長がやり手だから、人口わずか三千で年間予算四〇億だぞ」
「温泉会館でも保育所、老人憩の家、福祉センター、生活改善センター、野球場、なんでもできちゃうのよ」
と、富橋の妻も羨ましそうに言う。
「もっともな、野球はなんたって遠軽だ。北海道はおろか全国的にも珍しい。チームに所属しているのが六〇〇人、野球をやるのは約千人、なんと十五人に一人はプレイするって町だからな」
やはり住めば都とか、お国自慢は止まらない。

38 牧場のコンサ-ト

若葉は牧場に着いて驚いた。
広い駐車場いっぱいに人が集まっている。
「小森若葉コンサート」と手書きの大きな看板が、高床のログハウスづくりの店の階段前に立てかけてある。題字の横には小さく「ソックリさん」と、添え書きがあるが遠くからでは見えない。
通行する車は全部停まるから道路にも車が溢れた。口こみにも乗って来たらしく人は続々と集まってくる。
町長も孫を連れて到着した。
「申しわけありませんが、本日は、子供のためのイベントです。十五歳以上の方はお引きとりください」
役場の振興課主任がメガホンを口に必死で叫んでいる。火に油を注ぐとはこのことだった。狭い町だから、たちまち噂が広まって、安国と生田原両地区の小、中学校、養護学校ひなぎく学園の子供達
が集まって来る。ついに、生田原と安国の駐在所から巡査が駆けつけ整理を始めた。群衆の雑踏の中に小型バスで日の光学園の子供達が到着した。
「あ、ヒトミちゃんがいた!」
勝子が、ハマナスの花を見つけて走り寄ったが人違いだった。日の光学園の子供達は、みなハマナスの花を胸に付けている。一人がカッコいいとみな真似することに園長も気づかなかったのだ。
園長の引率でアイスの販売コ-ナ-に並ぶと、広場に溢れていた子供達が、われ勝ちに行列に割り込み、ショッピングハウスから運ばれて来たアイスを一人づつ受けとり、嬉しそうに口に入れる。し
かも、日の光学園の先生は当然の権利と信じて並ぶから他の大人も列に続く。町役場の職員がそれに気づいくの遅かった。
列から大人だけでも引き出そうとしたのが誤りで争いが始まり、それを止めるのにまた騒ぎが広がる。ともあれ、日の光学園以外の子供や一般の成人の一部の人がアイスを手にしたとたんに不公平は
できなくなっていたのだ。これ以上にトラブルが広がると町長のリコ-ル運動にも成りかねないと判断した林田町長が自腹を切っても責任を持つということで、誰でも自由に並んでいいことになり、三
回も並ぶ子供が出たりでついに収拾がつかなくなった。
牧場側は、町の予算の大ばん振る舞いと聞いているから出荷の数だけ必死で数えているが、牧場はじまって以来の出荷数になるのは明らかで従業員総出の奮闘だったがついに在庫が尽きた。
マイクを握った背の高い役者顔の男がテラスの上で、若葉と並んで立った。男のほうが心なしか上気している。
「企画課の近東です。小森若葉のソックリさんを紹介します」
と、自己PRのあとに若葉を紹介する。大きな拍手が湧いた。
イントロが始まり手拍子が鳴ると、赤いドレス風の衣装から若葉のすらりとした白い足がのびて軽快にステップを踏む。
「オヤッ」という表情が、若葉に走った。
自分の声に合わて口パクをと思ったのに歌声がない。B面のカラオケ側になっていて音だけが出てくる。一瞬、迷ったが、こうなれば仕方ない歌うしかないが、自分の歌だから当然ソラで歌える。若
葉は堂々と歌いだした。
観客も驚いた。ソックリさんだから物真似だと思って聞いているのに、フリまでも本物ソックリで迫力も充分、耳を疑い度肝を抜かれて歌に合わせて身体を揺すり、曲が終わると北の大地から沸くような拍手が続いた。
「いいぞ、ソックリさん!」
手拍子が鳴り歓声が沸く。会場は興奮に包まれた。
町長も孫と踊り、ぎこちなく身体を動かす富橋に耳打ちする。
「さすがに上手じゃないか?」
「口パクが? それとも振りがかね?」
「歌だよ、歌、若葉の歌……」
口だけ動かしていると信じている富橋には、意味が通じない。
若葉は歌っていて楽しかった。若葉の歌声が、日頃は静かな文学の町生田原の原野に声量豊かに広がり、森に野に川に大空に吸いこまれてゆく。大自然の中でのびのびと誰にも指し図もされず、自由
に思うがままに歌える喜びを若葉は知った。これが生きているという実感なのか……。
テラスの下に信二がいる。じっと耳を傾けて聞いてくれるのが痛いほど分かる。この人のためにも、と、若葉は全力で歌った。
たて続けに六曲を歌い終えても拍手はなりやまない。アンコールの嵐なのだ。若葉は、手を振って笑顔で応えた。無事に終わったと思うと涙が溢れてくる。それでも、ホッとした若葉がマイクを安心して近東主任に渡し、富橋の妻の姿を求めた。歌い終わるまでにヒトミを探すからと言っていたからだ。
その時、テープがカラオケのB面から歌入りのA面にターンしてイントロが流れ、小森若葉の歌声がスピーカーから流れ出た。観客は、狐に化かされたように、あっけにとられてテラスでキョトンとしている若葉を見ている。
「口パクでも本物ソックリで、よかったぞ!」
一人が大きな声で怒鳴ると次には女が叫ぶ。
「ソックリさん。すてきだったわよ!」
盛大な笑いと拍手が沸き、係があわててテープを止める。観客は大満足で散り始めた。林田町長が、富橋に近づき耳打ちする。
「富さんも人が悪いな、ワシまで担ぎおって。ワシは本物だと確信してたからカラオケにしといたんだぞ。秘密は守るからな」
富橋が目を剥いた。口パクだと信じてたからだ。
歌い終わった若葉がテラスで手を振っていると、幼い子がテラスの階段を駆け登って来る。すぐ後を日の光学園のおばさん園長が続いて来た。色紙と赤と黒のマジックを持っている。
「この子にサインしてあげて」
「サインですか?」
若葉が二人を見た。
「どうしても若葉さんのサインが欲しいんですって、ソックリじゃなくてもいいから書いてあげてね」
若葉が、すらすらと書き慣れた字を書く。
「お名前は?」
「ヒトミ……安本ヒトミなの」
「ヒトミちゃん? あなたが?」
そのとき、富橋の妻が下から叫んだ。
「ヒトミちゃん。おいで!」
小森若葉のサインに「ヒトミちゃんへ」と書き加えてもらった色紙を大切そうに抱えたヒトミが、嬉しそうに階段を駆け降りて富橋の妻に抱きついた。
そのヒトミの手をそっと、傍に立っている信二に触れさせると、信二はよろめきながら腰をおとし、わが子の感触を確かめるように両手でしっかりとその手を握り頬を寄せた。
信二の眼帯の下から涙が筋を引いて流れるのを、幼い娘が、けげんな表情で見つめている。涙はヒトミの足をも濡らした。
若葉がそっと信二の肩に手をおいて鼻をすする。

39 追手

「空港から尾けてて、運転ミスで転落とは情ねえじゃないか!」
酒上になじられた地元のヤクザも面白くない。朝のニュースで知った昨夜の不首尾がトラブルの原因で、全員が不機嫌だった。
前夜、旭川空港に酒上が着いたのは十八時三十五分、出迎えた飯田連合北海道支部の四人と一台の車で五人が乗り網走に急いだ。
友好団体の道東任侠組に連絡を入れて、目の不自由な男が若い女を連れて大きなバッグを大事そうに持って、女満別空港からタクシ-に乗り、網走方面に向かった、と聞いたからだ。安本が大金持参
で逃げているのは間違いない。酒上は確信した。
網走の任侠組事務所に到着すると、酒上達五人は丁重な出迎えを受けた。飯田連合本部から、安本捕捉による大金奪還と、酒上の逃亡生活への支援として多額な手付金が振り込まれているからだ。
目の不自由な安本らしい男が若い女連れで乗ったタクシ-を、任侠組の組員二人が追跡中で、行く先を確認次第連絡が入ることになっているのにまだ何も連絡がないという。あまりにも組員からの連
絡が遅いので、女満別空港に出入りするタクシ-会社に問い合わせると、女連れの目の不自由な男を乗せた運転手が判明して、その二人は、コフツ湖の北浜寄りでハマナスの花を見ると言って。車を降
りたという。
「多分、安本の泊まる宿まで追跡中なんだろうさ」
吉報を待つ酒上らは、任侠組手配の網走のいかがわしい宿で組の歓迎を受け、バクチの花会と酒宴で気勢を上げ、眠りについた。
ところが、朝になってラジオのニュ-スで、昨夜遅く、拳銃所持の暴力団組員二人が、崖から転落して炎上した車内から焼死体で見つかった、と報じている。車のナンバ-が画面に映しだされて追手
の二人に間違いないことが確認された。
「なんだこのザマは? 軍資金をたっぷりつぎ込んだのに、この不始末で肝心の安本の行方だって見失ってるじゃないか」
「金は全額返して貰いたい!」と、怒った酒上が主張した。
「この仕事で仲間が死んだんだ、香典ぐらい出せ!」
と、任侠組も怒った。
勢いが萎えた任侠組は、この割りの合わない仕事からの撤退を表明、多額の協力金は死んだ組員への不祝儀として没収するという。
当然ながら酒上が反発して口論になるが、立場が違うから意見は噛み合わず、解決は後日にとケンカ別れになった。
地元の組と別れた酒上ら一行五人は、それでもまだ執念深く追撃態勢を整える。
警察上がりの酒上の得意の聞き込みが功を奏して、国道添いのガソリンスタンドの従業員が、昨夜、北浜の駅近くで、女連れの目の不自由な男を見かけたとの証言を得た。大きなバッグを担いでいた
のを確認して彼らは勢いづいた。大金さえ奪えれば豪遊できる。
北浜の駅に立ち寄り、停車場という店で夫婦を問い詰めると、夫が首をひねり「そんな人知らないねえ?」という。
あちこち調べまわった挙げ句、釧網(せんもう)線各駅をテリトリーにしているタクシー会社に電話を入れて、網走駅前のタクシ-会社の配車係を問い詰めた酒上が、有力な情報を得た。
「昨夜、終電で降りた二人連れが、すぐ駅前のホテルに入った」
酒上が、そのホテルに行き、「目の悪い友人を迎えに来た」というと、フロントの男から、
「今朝、遠軽の知り合いが来てましたよ」との返事があった。
勇んだ酒上らが、遠軽に入ったのは夜七時、店は閉まり人通りもない。それでも、強引に家々を訪ね、遠軽駅にたむろしていた善良な市民を拳銃で脅しながら情報を集めると、生田原町で小森若葉の
ソックリさんの屋外ショーが行われたことが判明した。遠軽町からもわざわざ生田原まで出かけた人が大勢いたらしい。
そこで、生田原に行って若葉のソックリショ-を見たという人を見つけ出して脅すと、目の不自由な男がいたとの証言を得た。
と、なるとソックリどころか若葉まで本物の可能性がある。
酒上はガキみたいな若葉などには米粒ほどの興味もないが、大金を持ち逃げしている安本には多いに興味がある。その安本をようやく追い詰めた。もう安本は袋のネズミで逃げ場がない。
酒上は大金も欲しいが、自分をナオミ殺しに駆り立てた安本が憎い。あの男だけはあのとき殺すべきだった。ここまで来れば、一人殺すも二人殺すも同じだ。酒上は意地になっていた。

一方、警視庁捜査四課の赤城も、引くに引けなくなっていた。
ナオミ殺し容疑者の酒上に両目を潰された安本信二が、若い女性を人質にして、北海道東部を逃走中という情報が、北海道警察庁本部から警察庁経由で警視庁刑事部四課で安本を担当していた赤城直孝の元に届いていた。安本には暴力団幹部赤垣四郎殺害の嫌疑がかかっている。
赤城はまず、北海道に路線のある航空会社に情報を求めた。
守秘義務をたてに乗客名簿の開示をかたくなに拒絶した航空会社が、人命に関わるという説得で内密裏に調査に協力してくれたおかげで、偽名の男女が羽田から女満別に飛んだことが分かった。
殺人だけなら一課の仕事だが、とりあえず、酒上と安本を捕らえることで暴力団の資金源に迫ることも可能となる、という理由で出張願いを出す。通常、刑事は二人一組で行動するが、実績不調で予
算がないこともあり道警に協力を求めることで赤城一人でいい。
それにしても、さすがは道警、その情報は驚くほど早い。警視庁には次々に進展状況が入っていた。
遠軽警察署管内の駐在所からの情報では、若い女が人気歌手を真似てパフォ-マンスショ-を開いたときの現場に、目の不自由な男がいたが、生田原町長の知人で別人だった。それより、甲府の桑田
奈緒美殺しで指名手配の酒上荒吉らしい男が、暴力団員数人と遠軽町市内に現れ、拳銃で民間人を脅したとの情報が大きい。
さらに、旭川空港警備員からの連絡で、「ナカガミさま」などと書いて酒上らしい男を出迎えた暴力団風の男達がいたという情報も、道警から入っている。
調べるとJASのその便には、たしかにナオミ殺人容疑で手配中の酒上とおぼしき男が、偽名で旭川へ搭乗したことが判明した。
しかも、彼らはまだその遠軽市周辺にいるらしい。すぐ立てば夜明けまでにはケリがつく。
旭川には終便十七時で間に合わないが、札幌ならJAL五二七便二〇時十五分がある。出張には手続きがいる。
まず、上司の鬼係長の爆弾を一発食うのはいつも通りだ。
「バカもの。とっとと行ってオホーツクの海へ沈んじゃえ!」
すぐ捜査協助課と打ち合わせをし、道警の協力を要請する。
「長野、山梨と山の幸を楽しんで、今度は海の幸かね?」
道府県との捜査協力、とくに指名手配者の追跡調査はこの課を通さないと仕事ができない。これで、北海道内での足を確保するのは警視庁の常套手段だから、皮肉をいわれても苦笑いするだけだ。
さらに、寄らなければならない部署がある。
赤城のいる刑事部屋と同じ六階の、隣り部屋にある刑事総務課という、お金をくれる有り難い場所だ。
赤城の顔を見かけたのかわざわざ、係長が出て来た。
「国家財政は厳しいんだぞ。たまには手柄立てて来い」
他の課の係長に説教されるのは面白くないが、この程度はやむを得ない。たしかに、手柄などとは縁遠いからだ。
必要経費の仮払いも、受けてしまえば肩身の狭いのも忘れる。
赤城刑事は、行きがかり上、先輩の佐賀達也に北海道出張を伝えるべく勤務先の警備会社メガロガに電話をすると、急にある議員からの依頼で民間人の極秘警護のために北海道に向かったという。
携帯が相変わらず充電切れなのか、何度かけても通じない。達也への連絡は後にして、JALの終便には余裕があるが、同僚に頼んでパトカーでサイレンを鳴らして羽田へ急いだ。
余分に浮いた時間を無駄にせず、三階の喫茶店で熱いコ-ヒ-を前に、安本逮捕の仁義を切っておこうと諏訪署へ電話をすると、進藤の部下が出た。
「ただいま進藤刑事は出張中で、行く先も不明です」
「では、携帯にかけるからいいですよ」
「携帯は変えたばかりで番号を知りません。わたし達も班長からの連絡待ちで不便で仕方がありません」
部下が上司の出張先も連絡先も言えないのは、その行動が守秘事項に入る重要な事件なのが警察の常識だから察しはつく。
「もしかして北海道に出張かね?」
「いや、それも箝口令になっています」
「いいんだ。わたしもこれから旭川まで飛ぶんだ。会ったら宜しく伝えとくよ」
「お願いします」
これで進藤も北海道に向かったことが確認された。
ならば友美にもと携帯にかけると、呼び出し音はするが反応がない。切ろうとするとロレツがまわらない声で友美が出た。
「ハイ。戸田……友美で-す」
「赤城です。こんな時間から酔ってるんですか?」
「酔ってません。シラフですよ」
「賑やかなようすですが、どこです?」
「札幌のね……歴史館に来たんだけど時間だからって追い出されちゃったのよ。ぶらぶらと北三条あたりを歩いてたら、なんかいい男に会ったから声かけてね、イッパイ飲んでバイバイしたところでご
ざいま-す」
「札幌まで行ってナンパですか? いま、先輩も北海道だそうです
が、一緒じゃないんですか?」
「あら、今朝の電話では北海道なんて一言も言わないのに……」
急に平常の声に戻る。器用なものだ。
「さっき急に決まったらしいですよ」
「でも、わたしが札幌にいるのは知ってるんだから、電話ぐらいくれたっていいのに……」
「友美さん、どこで飲んでました?」
「地下の……そうか電波が届かなかったんだ。多分、留守電に入ってるわね。切るわよ」
「待ってください。ボクも、これから札幌に行くんです。遠軽町に安本らしいのがいるそうで……」
「紋別郡の遠軽? やはりオホ-ツク近くまで逃げてるの?」
「それを追って、酒上も行ってるらしいんです」
「あの殺人犯、あくまでも安本を殺すつもりなのね?」
「例の大金を狙ってるんだと思います」
安本の故郷が北海道のオホ-ツク側の出身で、幼い娘がそこいると諏訪のクラブで達也が聞いた。その話からも、安本は必ずそこに逃げると確信して友美は北海道に来ていた。皮肉なことに達也は多分、安本と同行しているらしい若葉の警護を頼まれたのか?
「先輩も多分、そこに向かうはずです。道警へ行って捜査四課の西島警部補を訪ねてください。わたしの名前をいえば分かります。
いま、北三条でしたら、西に行けばすぐ旧北海道庁舎の横に出られます。その先が道警本部ですから……そこから道央道を走ってもらって、旭川署で待っててください。そこで会いましょう。わたし
は札幌空港に待機している道警のパトで旭川署に送ってもらって、そこで中継して、遠軽へ運んでもらいます」
「わたしは旭川まで列車で行きます」
「じゃ、旭川署で会いましょう……」
電話を切った赤城は、ボ-ディングル-ムに急ぐ。
友美は、札幌駅に走りながら、携帯の留守電を聞く。達也の怒声が入っていた。
「若葉の警護で急に北海道に来た。何処にいるんだ? 遠軽町へ行ってるぞ!」
「なによ、連絡がわるいのは自分じゃない」
駅に走り込み、ドア-が閉まる寸前の特急にとび乗った。
スーパーホワイトアロー二五号二〇時発で旭川着は二十一時二〇分、赤城が空港に着くのは多分二十一時四十五分のはずだ。そこから高速道路をとばしても友美が先に着く。これで余裕ができた。
車掌の乗車券チェックが終わると、たちまち酔いが出たのか深い眠りに落ちいびきをかく。前後も隣りも空席だから誰にも迷惑はかけないが、夢見がわるかった。鬼のデスクが「ボツだっ!」と、わめいている。

40 集結

若葉のソックリさんコンサ-トが予想以上の大成功で、林田町長はすっかりごきげんになり、自宅に富橋夫妻と安本・若葉のペアを夕食に招いて、過疎対策などで一席ぶっていた。
そこに町の駐在からの無粋な電話が、町長の酔いを覚ます。
受話器を耳にあてて林田町長が怒った。
「だから何だ! 殺人容疑の酒上らしいのが五人で拳銃携行? 遠軽を出たのか? 早く逮捕して生田原の手柄にしろ! 目の悪い男を追ってるのか? なに? 過疎の町にわざわざ戻って来た土地者
と客人を、外へ追い返せだと……人口が二人も増えるんだぞ。
敵が攻めて来たら、柵をきずき土のうを積んで敵を防ぎ、農具を刀にもち変えて闘うのが屯田兵だろうが……ここ生田原にはな、開拓の血が流れてるんだ。拳銃を持った五人の無法者が現れたって撃退できんでどうする? 町の住民を守ることじゃなかったのか?
武器弾薬が不足? だったら遠軽署の機動隊を呼べ。なんだと、間に合わない?」
声が大きいから茶の間に筒抜けになる。
「な、今聞いたようなわけだ。遠軽から安国へ、安国の駐在から生田原へと申し送りで電話が入ったそうだ。目つきの悪い凶暴そうなナラズ者が二十分で来る。遠軽署が出てもすぐには追いつけん。
なにがあったのかは知らんが、ここは信二の故郷だ。若葉ソックリさんももう生田原町の住民だからもう誰にも渡さん。二人のかくれ場所を探すからな……」
「北見へ逃げよう」
富橋が決断した。今は誰も住んでいないが、定年前の職場の関係で北見市にも家があり倉庫替わりに使っている。村田銃での熊打ちなど日常茶飯ごとの血の気が多い営林署仲間を集めて、難攻不落の
要塞をきずくのだ。
富橋の前歴は営林署副所長だから、不法伐採などを取りしまる司法官として警部格で、元部下も地位は警部補で凶悪な伐採犯を何度となく格闘の末に逮捕しているから戦いには慣れている。中には出会い頭に襲って来た大熊をナタで闘って倒した猛者もいる。
かつては網走営林署管内の山林内の熊なら、富橋の顔を見たとたんに尻尾を巻いて樹林の中に姿を消すと言われたこともある。
悪党も熊も逃げると襲ってくる。距離をおいてにらみ合う。これなら負ける気はしない。
「さ、帰りましょう。ご馳走さまでした」
久しぶりの洋食で富橋の妻も満足気だった。
「迷惑をかけました」
信二と若葉も心からの礼をいい、町長の家を辞した。
生田原町を貫通する国道二四二号を西に走る。遠軽から北見へはこの道しかない。生田原川にかかる淀橋、荒瀬橋、滝上橋を越えると人家が絶えて月明かりもない。先方からライトが光った。
敵の車が早くも来たのか……相手は拳銃を持っている。
左手に、日の光学園と同じ社会福祉法人に属する陽向園という施設がある。そこにバックで入って車を道路側に向けて止め、エンジンとライトを切ると闇がおとずれた。相手を素通りさせるのだ。
「若葉さん。その座席の下からナタを頼む」
いつの間にか誰もが、ごく自然に若葉と呼んでいた。
「二本あるから私にもください」
富橋がナタを持つと妻の勝子も勇む。
若葉が二本のナタを探し、一本を富橋に渡すと、隣り席の信二が勝子の手を押しとどめてナタを握った。
「あんたはダメ、目が見えないんだからよこしなさい」
勝子が命令口調で信二の手からナタを奪った。
富橋の釣ってくる一メートル近いサケを、バッサリ荒切りし続けて数十年、いざとなればサケも人間も同じだと思っている。とても僧侶の一人娘だったとは思えない。
「どうしたんだ?」
走り去るはずの車が通過しない。
相手の車もライトを消した。かすかにエンジン音がする。少しづつ徐行して近づいて来て、空き地に入り正面から向き合った。
「全員伏せろ。早く!」
小声で富橋が叫び、運転席のドアを開き外へ転げ出ると同時に、まっ正面からライトが光った。その光の輪の外から富橋が立ち上がり、熊のような雄叫びを上げて車に突進し、ボンネットを駆け上がって運転席側にとび、力いっぱいナタを振るいガラスを割った。
中から男がとび出し、富橋の右手のナタを叩き落とし組打ちになった。助手席からも長身の男がとび出した。
信二も若葉が止めるのを振り切って手探りで車を降り、殴り掛かって来た男とカンでパンチの交換をし組み打ちになった。
勝子も四駆の高い座席からとび降り、一度転んでから走ってナタを振るった。鋭い風音がする。
「あんたっ、負けるな!」
この声に相手の男がひるんだ。力が抜ける。
「待ってくれ、誰だ? あんたたちは?」
その声で、若葉が顔を上げ、身を乗り出して叫んだ。
「佐賀さん! あたしです。若葉です」
「よかった。あんたの警護を頼まれてな」
相手は、達也と進藤だった。
達也が気を抜いた隙に富橋が一発殴った。達也が反撃する前に、進藤が割って入る。殴られ損の達也が富橋を睨んだ。
恵美からの連絡で、若葉にも危機が迫ったのを知った前橋女史がすぐ藤井に知らせた。会社から急遽若葉への警護を再び依頼された達也は、他の仕事をキャンセルして羽田空港に急ぎ、そこで偶然、酒上を追う進藤と出会ったのだ。旭川からは共助課で話を通してあるから道警のパトカ-で行く、という進藤を時間がないからと説得して旭川からレンタカ-でとんで来たのだ。
「蓮田君、無事だったか?」
安本といわず呼びなれた名を呼び、達也が盲目の信二の手を握った。殺人の容疑者であろうと、自分の注意不足で拉致され半殺しにあっている信二に負い目を感じていたのだ。進藤がどさくさに紛れて若葉の手を握り、富橋も照れながら妻の勝子の手をにぎる。
月明かりに、片手にナタを握った勝子の雄姿が凄まじい。
「こいつが安本ですか!」
進藤がふと、黒メガネの下の眼帯に気づいて安本に飛び掛かろうとする。達也があわてて進藤を押し戻す。
「これはまだ蓮田だ。容疑者だからって犯人扱いしなさんな。あんたは酒上を逮捕すればいいんだろ?」
富橋が叫んだ。
「時間がない。もう来るぞ、ヤツらはハジキ持参だからな」
「追って来るのは酒上ら五人だぞ!」
達也の一言に、思わず若葉が両手の拳を握りしめて涙ぐむ。盲目の信二が頷いた。天はまだ若葉を見捨てていない。あの男をこの地に呼び寄せたのは神か仏か、あるいは地獄の使者なのか。
「営林署跡へ行く……」
富橋がナタを拾って運転席に戻って車をUターンさせ、今、来た道を戻る。相手の武器に勝つには、まず地の利と考えたのだ。
後に続く車の助手席で達也が、あごを撫ぜて息まいた。
「熊オヤジに反則パンチを一発食らわされた。倍返ししてやる」
「いや、安本もなかなか。本来なら暴行罪で逮捕でしたな」
進藤が、運転しながら感心する。
「もうしばらく蓮田でおいてくれ。かならず自首させる」
「やはり、赤垣は安本が殺ったんですかね?」
「それは分からん。確かなのは賭博罪と金銭詐取ぐらいだ」
「安本はダミ-で、黒幕に誰か大物がいるんでしょうな?」
達也が沈黙した。黙秘権で逃げるが心の中ではこんなことを考えていた。達也には事件の背景が見えつつあるのだ。
(下手すると、政界の大スキャンダルになる……)
レンタカ-の運転席側のガラスが粉砕されているから、山里の冷え冷えとした初秋の夜風がもろに吹きこんで来る。
左手に生田原駅、農協、商工会、消防署、信金。右手に町役場、公民館などをみて町のメイン通りを抜ける。
ネオンも人影もない。静かな町だ。駐在所が見えた。
後続車の助手席にいた達也が突然、手をのばしてクラクションを鳴らした。進藤が驚いて急ブレーキを踏む。前の車も停まった。
「進藤君、ちょっと待っててくれ」
達也が駐在所に入った。巡査の姿を認めたからだ

41 待ち伏せ

車をおりて道を横切り駐在所に入り、軽く挙手をする。
「私は、元警視庁刑事部捜査一課警部補の佐賀達也です。これから営林署跡に行き、襲って来る暴力団を迎え打ちます。武器弾薬を携行して同行願います」
電話中だった駐在所の巡査は、気が動転していたところだから、達也がわざと小声でいう元という部分だけ聞き落とした。
「聞いたか、警視庁から応援が来た! 営林署跡に行ってるぞ」
奥さんが出てきて涙ぐみ、手を合わせて達也を拝んだ。
「あなた、これで死なないですんだわね」
駐在が藤岡と名乗って、照れくさそうに、「町長に脅されて、ワシと安国の駐在で拳銃所持の無法者五人を防げと言われたんで、いま女房と水杯を交わしたところでしてな」
「実弾は?」
「支給の実弾は少ないが一発必中の自信はある。いま電話で話してた安国駐在所の神保巡査もすぐ来る。あんた、銃は?」
「あいにくと手ぶらで……」
「熊撃ちの猟銃がある。これ持ってくかね?」
壁から銃を外して、少しばかりの弾薬を達也に渡す。
駐在が準備を終えて、町長の自宅に電話を入れる。
「町長、営林署跡でヤクザをむかえ打ちます。警視庁からも助っ人が来ましたからいい勝負になります。遠軽警察も応援に来ますが、その前にケリつけときます」
車に向かう達也の背後からブツブツと呟く。
「ワイアット・ア-プには成り損ねたが……」
駐在の巡査が、進藤に挨拶して後部座席に乗りこむ。
駐在二人で闘わねばならない、と悲壮な覚悟をしていただけに、送り出す女房もニコヤカだ。子供も手を振る。
「寒いな。ドアーのガラス割れたんですか?」
「参ったよ。レンタカーなのに」
「レンタカー? 道警のパトカー使わんのですか?」
「ええ、まあ……」
車が駐在所先の十字路を右折して中央橋を渡ると右上の丘には、オホーツク文学碑公園があり、著名な作家の北海道関連の作品が刻まれていて、河川敷にはゲートボール場や歌句碑が並んでいるという。闇で見えないのが残念だ。
その公園の向かい側下、橋を渡った左側に、木造二階建ての遠軽営林署生田原森林事務所の旧庁舎があり誰もいない。行政改革で予算が縮小され古い建物が残されていく。
勝手知った敷地と建物だから、富橋はどっしり構えている。
駐在さんも落ちつきを取りもどしたらしい。
「藤岡です」と自己紹介をし、それぞれが名乗った。
富橋が、小型懐中電灯でヒューズボックスを探し、ブレ-カ-を上げるとまぶしいほど部屋は明るくなったが、殺風景な上にホコリだらけで手も触れられない。富橋の妻と若葉が、雑布を見つけて台所の水道からバケツに水をくみ掃除をはじめた。
車が一台来た。ライトを点滅させて「撃つな!」と合図して橋を渡り、安国駐在所の神保という巡査が、ライフル一丁を持ちこんで来た。腰には拳銃を下げている。
達也は、器用に二連発銃に弾丸を装てんし肩にのせてみる。違和感はない。達也は、警察学校で射撃はトップの成績だから、どれでも一発撃てば銃身の癖まで見ぬける。銃に触れて頷いた。
ただ、どの銃にも実弾が少なすぎた。
信二は、すすめられた椅子に座って腕組みをして、成り行きを感じているのかと思ったら頭を前後に揺すって居眠りをしていた。どこまで神経が太いのか。それとも疲れ切ったのか。
「いい街だねえ」
人家が少なく灯火が貧しいのがいいのか、静かなのがいいのか意味不明の言葉を達也が吐くが、だれも合いづちを打たない。
「来たようですな……」
進藤がニュ-ナンブを取り出して装弾を確認した。
一台の車が、どうやら森林事務所の旧庁舎に気づいたらしく、ゆっくりと橋を渡りはじめた。
「ヤスモト-、出てこい!」
わざわざ出てゆくはずがないのを承知でわめいている。
達也が窓から猟銃をつき出し狙いを定めた。

続く