人生のタイミング

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奧山 礼紫(おくやまれいし)
東京都出身 新宿区在住 2月7日生。
12歳から4年間英国ロンドン在住。帰国後、大学在学中に米N,Y州コロンビア大学Political Science短期留学、立教大学大学院史学研究科博士前期課程修了。広告代理店、BS放送局勤務後、フリーライターとして、日本航空機内誌「アゴラ」にて海外で活躍する日本人アスリートのインタビュー記事を担当する。花見正樹師に師事して九星気学、四柱推命を学び、現在、新大久保「幸運占館」で対面鑑定、yahoo占いコーナー、各種占いコラムを掲載中。また志木カルチャーセンター、新所沢カルチャーセンターにて九星気学、風水、人相学の講師として活動中。

 

  人生のタイミング

     奥山 礼紫

7時20分。朝のテレビ番組の占いコーナーが始まる時間である。
「今日のあなたの運勢は中吉。友達と些細な事で喧嘩してしまうかも。オレンジ色のグッズを持っていると仲直りできそうですよ。」
明るい女性アナウンサーの声と共に、すぐにオレンジ色のものを部屋中探し回る。
そして決して学校で使うことがないであろうオレンジ色のマグカップをカバンに忍ばせ登校する。
オレンジ色のマグカップ に対する画像結果 占い結果が良い時は、全てが順調に進んでいくような気がして足どりも軽くなり、反対に悪い時は少し嫌なことがあると、占いが当たっていたと妙に納得していたように思う。
朝一番のテレビの占いコーナーだけではなく、新聞や雑誌の一言占いにもかかさず目を通していた。
占いが大好きというわけではないが、星からのメッセージ、未来預言などといったタイトルに神秘的なものを感じていた。
西洋占星術も四柱推命もわからなかったが、占いの持つ世界観が好きで興味があったように思う。

ある日テレビで数々の文学賞を受賞し、直木賞の候補にも上がっている有名作家たち5~6人の対談番組を見た。
その中の作家の一人に、『4TEENフォティーン』で直木賞を受賞した石田衣良がいて、彼が小説を書くきっかけとなった話しをしていた。
大学を卒業後、フリーターや広告代理店でコピーライターなどの仕事を転々とし、ゆくゆくは広告プロダクションに就職しようかと考えていたという。
そんなある日、仕事の帰りにたまたま立ち寄ったコンビニエンスストアで女性誌をパラパラとめくっているとページ隅の占いコーナーが目に留まった。
「牡羊座は今後2年、土星の重圧がかかる。その間に真剣に仕事をすれば自分の中にある何かをクリスタライズ(結晶化)できる」
この言葉が心に突き刺さったという。
彼にとってそれは小説を書くことじゃないかと思い、翌日から小説を書き始め2年後に最初の単行本が書店に並んだという。

 子供の頃から大の本好きであったが、ただ好きというだけで職業にできるほど物書きの世界は甘くないと考え、それまで小説を書いたことは一度もなかったという。
石田衣良の作品は、街の細やかな描写と登場人物の内面を繊細に描く作風がとても印象に残る。
数々の文学賞を受賞した作品はいくつかテレビドラマや映画にもなった。
そんな彼もたまたま立ち寄ったコンビニエンスストアで雑誌の占いを見ていなければ、小説家としての道は無かっただろうと語っていた。
占いの一言が彼を突き動かし彼の運命を大きく変えたのである
私は石田衣良の話に占いの力に釘付けになった。その日を境に占いを見るだけでなく、その背景や鑑定方法についてもっと知りたくなったのである。

新大久保で占い鑑定を始め、8年目となった。
高校生から会社経営者まで幅広い年齢層の人が日々訪れる。
ふと、鑑定を続けている自分の姿に石田衣良の姿を重ねてみる。
私もたまたま見たテレビ番組で石田衣良の話しがきっかけとなり、それまで興味があった占いが今では生業となっている。
長い人生の中で何がきっかけとなるかはわからない。
しかし人生が大きく動きだすのは、ほんの些細なタイミングと少しの勇気であったりするのだ。

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