神なびて 上野の山に春の鹿

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手古舞伝える辰巳芸者-5

高尾 義彦
「人生八威聲」2018年10月
秋季号・第16巻より

いまでは総代の多くが昔のことは知らない世代となり、丑井さんは自分の知識や体験を引き継ぐことに使命感を感じつつ、活動を続ける。「なんとか東京五輪の年までは、若い人たちの指導を続けたい」と願う。2020年は例大祭の年に当たり、東京五輪とパラリンピックの間に、その時期がやってくる。
ちなみに、今回、丑井さんを紹介してもらったのは、門仲にある行きつけの小料理の店「多万村」の女将さん、村田愛子さんから。村田さんの実家は、先に触れた料亭「幸月」で、愛子さんは子供の頃から丑井さんに可愛がられたという。

我が家がある佃地区では、この夏、住吉神社が三年に一度の例大祭を迎えた。江戸の初期に、家康の命で摂津から移ってきた漁師を祖先に、祭りも引き継いできた。今年は例大祭の時だけ揚げる六本の峨を立て、八角神輿を台船に乗せて隅田川をめぐる「神輿渡御」も行われて、隣りの富岡八幡宮に負けずに賑わった。
峨を揚げる六本の柱は高さ20㍍ほどもある。祭りが近く、佃小橋のほとりの運河の泥に埋めてある抱え柱を、クレーン車も使って、若者が総出で引き上泥の中で保存するのは腐食を防ぐ先人の知恵だ。峨城に向かって扇型に配置され、ここでも江戸の心意えている。
神社の氏子が富岡八幡宮の神輿を担ぐこともある様、二つの下町が憩いの時間を演出してくれている。
住まいを構えた江戸の下町は情緒豊かに季節が移る。

取材にご協力頂いた丑井美代子様に感謝してこの項を了とする。高尾義彦。

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神なびて 上野の山に春の鹿    一六日
(2017/02/16)
上野公園・東京国立博物館で開催中の「春日大社千年の至宝」展。国宝や重要文化財の春日鹿曼荼羅を展示。会場内は汗ばむほどで春を思わせる。駆け足で一時間半ほど。居ながらにして奈良の都を味わった。

しなやかな 言霊求め冬のデモ
(2017/0201)
連発される米大統領令。移民を拒否し、自国の国益を追い求め、批判するメディアに態度を硬化させる。日本は戦後、米国から民主主義を学んできた。トランプ大統領に反発する米国内の声は、その民主主義がまだ生きている証拠と信じたい。

菜の花や 我が家のソファに二三片
(2017/02/13)
房総から来た菜の花。花瓶から花びらが二三片、ソファの上に散っていた。今週の東京は、比較的、温かそう。このまま春になるとは思えないけれど、JR有楽町駅まで、本格的に自転車通勤を再開する。