屋形船 長屋の花見聞きながら

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特別寄稿

寸又峡を遠く離れて-4
=「人生八馨」2017年正月号・第九巻

高尾 義彦

掛川市で焼肉屋を経営していた金被告の母親(オモニ)を訪ねて取材したこともあつた。
在日の人々が置かれた生活の現場を実感した
思いがあつた。
判決は、静岡支局在任中の72年6月に言い渡され、死刑の求刑に対して、無期懲役刑だつた。金被告は最高裁まで争ったが、上告は棄却されて有罪が確定した。一九九九年九月、韓国渡航を理由に仮出所が認められ、2010年3三月、82歳で亡くなつた。
一方で、金嬉老事件後も在日の人権を守る活動を続けてきた笹牧師は75年にNHKを相手取り「韓国人の名前を日本語読みするのは人権侵害」と、名前の原語読みを求めて一円訴訟を起こしている。最終的に最高裁で敗訴となつたが、最高裁判決には、雀牧師の主張を認める文言もあり、この訴訟を契機にNHKは民族語音、.外国母国語で報道するようになつた。ちなみに雀昌華牧師は「チオエチァンホア」、径善愛さんは「チエソンエ」と発音する。金嬉老被告は「キム ヒロ」。
金嬉老裁判では、民族差別について発言する法律学者や知識人が 「特別弁護人」などの形で被告を支援し、殺人、監禁などの罪は罪として、社会に深刻な問題提起をしてきた。
取材を通じてこうした人たちを知ったこともあり、七三年に東京社会部に転勤になつた後も、裁判の経過や韓国に戻った金被告が、再ひ現地で犯罪を起こしたことなどが気になつていた。
社会部では七五年に司法記者クラブに配属されることになるが、静岡支局での裁判取材の経験がなければ、記者としてこの道筋をたどったかどうか、特に「金嬉老事件」との出会いに運命的なものを感じざるを得ない。翌年にロッキード事件に遭遇したことも、この延長線上の出来事だった。

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屋形船 長屋の花見聞きながら
(2017/03/26)
屋形船でてんぷらや寿司を味わい、落語を聞いて、隅田川沿いの桜を楽しむ、という趣向。しかし桜はほとんど開花せず、冷たい雨。それでも浅草・吾妻橋から船出して、桂伸治さんの「長屋の花見」を聞きながら豊洲市場用地など眺めて、連れ合いと二時間。

豊島から 産廃消えて花見待つ
(2017/03/29)
香川県は二八日、豊島に不法投棄された産業廃棄物の搬出が完了した、と発表した。公害調停成立から一七年。総量は九〇万八千㌧。ようやくごみの島の汚名を返上するが、汚染地下水の浄化や跡地利用が課題。安岐正三さんはツツジの花見に断酒解禁か。

桜模様の ネクタイ締めて年度末
(2017/03/31)
濃紺の地色に小さな花びらを密集させた図柄。今日で定年を迎え職場を去るサラリーマンも? 最近は六五歳までの雇用確保が義務化され、嘱託などで仕事を続ける人も。自分の会社生活は六月一六日の株主総会まで。