にがうりが出来ました。
たった一つの宝物
過酷な季節、過酷な環境の中で、よくぞ頑張ってくださいました。
さぞ、疲れたことでしょう。
家庭菜園の経験もはるか昔の事
あれからまだ生かされている人生を惜しむかのように
猫の額ほどのベランダでニガウリを一株植えました。
菜園用ネットを買い、物干し竿の寸法に合わせてセットすると
私の脳が、そこに這うニガウリのツルに見事なゴーヤがぶら下がっている光景と、覆われた緑の葉が真夏の灼熱の日差しから守る我が家の清々しい光景を勝手に作り上げ、ひとりワクワク感に酔っておりました。
しかし、しかし、
地球環境はすっかり変わり
「今は五月よ、明るい時、緑輝く光の時・♪・」と口ずさんだのは今から60年以上前のこと。
今年5月の関東の強風は風に向かって歩けないほどに・・、交通機関にも影響がでるほどでした。低気圧が三陸沖で急速に発達し、一時的に冬型の気圧配置が強まったことが原因とのこと。
我が家のベランダに張り巡らしたネットも大きく揺れ、そこにしがみついてツルを伸ばしているニガウリもしっかりと手と足をネットに巻き付けて飛ばされないように頑張りながら、這い巡っています。その光景は健気で逞しい限りでした。
しかし、どんなに頑張って小さな黄色い花を咲かせても、暴風にむしり取られ、無残にも散り飛ばされてしまいます。
そんな光景を目の前にし、支柱を立て、ネットを固定するくらいしか助けてあげられない私、苗を買ってきたことを後悔する日々でした。
暴風は何日幾日も続きました。咲いた花はみんな散らされました。
どんなに祈っても、どんなに励ましても、地球環境を壊したのは人間。私は違うとは言えません。
「ごめんね。がんばって! がんばって!」
としか言えません。
とうとう諦めなければならない日がやってきました。
根元からだんだんと枯れ葉が目立ってきました。
張り巡らされた葉も小さく萎んで見えます。
ギャンブルを手仕舞するかのような情けない気分が芽生え、人間の勝手な残酷さを恥じる心を横に置いて、今一度這いめぐらしたツルを見渡すと、
長かった梅雨開け後の残暑の夕暮れに影のように映し出された小さなニガウリがただ一つ、目と鼻の先に映し出されるのを確認しました。
言葉を失った私。
その小さな命の誕生を知る由もなく、ここまでの成長を見守ることさえ怠った私。ニガウリは私の心を知っていたにちがいない。ツルを切られ、ネットからもぎ取られ、愛のかけらも失せて捨て去ろうとした私の心を。
「ごめんなさい」
「ありがとう」
よく頑張ってくれたね。
凄い!
私はあなたから偉大なパワーをいただいたよ。
挫けないで頑張れば、必ず実がなることを。
私は今、最後の人生をいきている。
くじけそうになるけど
最後の最後まで、実をつけることを忘れずに
頑張るから・・
ありがとう!
小さな、小さなニガウリさん。
大きな 大きなニガウリさん。