乾 杯

イチョウ2 jyoukeiji-2(sake)

「ただいま帰還しました!」
扉を開けると
さわやかな目と、白い顔があった。
隣人の主(あるじ)が長い闘病を終えて帰宅したのである。

10か月前のこと
腰の激痛で起き上がることも出来なくなった主(あるじ)は
救急で運ばれ闘病の人となった

筋肉のない細い身体は
手術の決断に時間を要し
一向に進展のない日々を余儀なくされた

主(あるじ)の妻である友人も
病名のない病と闘いながら
ふらふらとした体で
看病と自らの治病の日々となった

哀しみと絶望が押し寄せたかのように見えたが
やがて
愛の光が点された

家族の連携と励ましの中で
夫婦は希望の光を見つけた

10か月後
主(あるじ)は娘の介添えで帰ってきた
時空を超えた子供の目が輝いていた
友人も日々癒えてきて
壁を乗り越えた老夫婦は再び生きる道を歩きはじめた

隣人はフレッシュな「葡萄じゅーす」を贈った
今頃は
親子で乾杯のグラスを傾けていることだろう