うさちゃん何処へ⁉

むかーし むかしのある日のことです
ゆうのうちでもうさぎを飼っていたことがありました
リンゴの木箱に金網を張って
裏庭の片隅におかれていました。

赤い目をじっと凝らして
鼻をピクピクさせながら
ニンジンの葉を奪い取るようにして
ただひたすらもぐもぐと食べていました。

ある時、そのうさぎがいなくなったといって
家中大騒ぎになりました
皆で探したけれど見つからず
とうとう夜になってしまいました。

ゆうがカラになったリンゴの木箱に近寄って
「うさちゃん」と声をかけると
暗闇の中から突然現れて
ゆうの胸に飛び込んできました

白い大きな耳を立てて
親しげに見つめる赤い目とピクピクした鼻
ずっしり重くなった体
そのぬくもりをゆうは今でも忘れません

うさぎは何事もなかったかのように
再びリンゴの木箱の中で
オオバコの葉をモグモグと食べていました

ある日 ゆうが学校から帰ると
うさぎがいません
リンゴの木箱もありません
うさぎを探す人もいません
うさちゃんどこへ行ったの?

食卓の丸いテーブルの上には
ぐつぐつと鍋の湯気があがっていました

昭和23年
ゆうが小学校一年生の時のお話です。