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ルーブル美術館の庭
ルーブル美術館の時計は
止まったまま音をたてないのに
案内人のお喋りはひどくやかましかった
歴史と芸術の重さに圧倒されて
胸苦しくなった僕は
バルコニーへのがれ出ると
初夏の風がさわやかであった
チュルイ公園に続くこの庭は
カルーセルの門を臨んで
いきいきと歴史の夢を甦らせる
六月の巴里の空に
つきせぬ憶測と憧れを
いつまでも描き続けている僕である
エッフェル君
エッフェル君 ごきげんよう
蝶ネクタイがよく似合う
首長のおすましさん
君は足を揃えてセーヌを飛びこえ
ときどき散歩するそうだね
白い雲が流れてくると
それを襟巻にするんだってね
ながーい襟巻は君が流行らせたのかい
エッフェル君 ごきげんよう
もうじき君のすきな巴里祭だね
ひと晩中踊り明かすつもりだってね
でも夜中に拡がる花火で
やけどだけはしないようにね
エッフェル君 ごきげんよう
また会う日まで・・・
大空に向って
モンマルトルの丘に立ち
画架に向って筆を執る
キャンバスは
うすもやこめるパリの空
絵の具はセリアンブルー
それに白をまぜながら伸ばしてゆくのだ
大空に向って描くこころの音は
アコルデンのひびきとギターのリズム
かろやかなシャンソンの流れと
さわやかに咲きにおう薔薇の花
限りなく拡がる夢とあこがれを
僕はモンマルトルの空に描きつづける
夕暮れのパリ
うす紫の夕暮れが
パリの街を包みはじめると
またたくうちに
天鳶絨(びろうど)のような夜が訪れる
すると パリは急に息づく
両手を大空に向かって拡げ
こびるように笑いかけるパリの夜
コンコルド広場では
妖精の物絵会がはじまり
シャンゼリゼの空には
マルグリッドの花が咲く
横町のキャフェや地下の酒場も
活気づいて
シャンペンをぬく音が
まるで打ち上げ花火の饗宴のように
街中に響き渡る