4 石井音楽事務所時代とその前後-4

幸福を売る男

        芦野 宏

 Ⅲ 新たな旅立ち

4 石井音楽事務所時代とその前後-4

 新しい事務所で-4

 「上を向いて歩こう」がスキヤキソングとしてアメリカでヒットしたころから、シャンソンもしだいに個性を失ったかのごとく、アメリカのリズムをとり入れたものが流行したり、外国のメロディーをとり入れたりしました。しかしこれはフランスだけでなく、世界じゅうの歌がしだいに歩み寄って、ひとつのものに近づきつつある現象だったのかもしれません。
エンリコ・マシアスの「恋心」は日本でも大ヒットしたが、これなどは古くからある日本の歌謡曲の流れと非常によく似ていて、まるで日本の歌のようだという評判です。アダモは「雪ポ  が降る」など近代的感覚の曲を次々と作っていま「歌の明治百年史」15周年リサイタルスター(1968.1l.8)すが、シャンソンも日本の歌も、しだいに近づきつつあるということだと思います。一方、一九六七年レコード大賞の受賞曲「ブルー・シャトー」などは、まさに国籍不明、とても日本の歌とは思えないほどです。
この百年、シャンソンの流れのなかにシャンソンのもつ独特の個性が脈うっていて、それはどんなに世界の歌が近づきつつあっても、けっして失われることなく脈々として流れつづけるであろうことを、この第一部のプログラムのなかにくみ取っていただけたら幸いと思っております。
さて、第二部の「紙芝居と私」は、三年前「、言さとの漬物の唄」で好評をいただいた同郷の作曲家・服部至氏の作品で、失われゆく街角の芸術家「紙芝居屋さん」を歌います。
「丹下左膳」や「のらくろ1等兵」、むかし懐かしい「安寿と厨子王」「母を訪ねて三千里」など‥‥‥。でも皆さん、いまやご存じない人のほうが多いでしょうね。1ウ~トラマン」や「ゲゲゲの鬼太郎」ならご存じかもしれませんね。テレビの発達によって、職場を失ってしまった紙芝居屋さんは、必死の抵抗で自分の芸術を守ろうとします。
最新式ステレオスピーカーを使い、ワイドな画面に映して、昭和元禄の良き時代に、再びあの忘れられつつある紙芝居を復活させようとするのです。しかし、東京の空に今や警んぼの姿も見えず、お寺の屋根の1から見てくれたカラスの誓えも見喜せん。この紙芝居はたった一人で紙芝居の歌を歌います。懐かしい水あめの歌、切りこんぶの歌、夕焼けが三十六階のガラス窓に反射してキラキラ輝いています。なんだか田んぼの水に映ったふるさとの夕焼けみたいにきれいだなと思いながら……「紙芝居と私」はそんな歌です。最後の第部は、おなじみの「サラダのうた」や「パパと踊ろうよ」から「愛は燃、葺いる」までを並べて、共演のスリー・バブルス、ボーカル・ショップとともにアズナヴール、ペコー、マシアスの曲で終わります。

ーーーーーーーーーー5月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時 開演時間 出 演
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6月ライブスケジュール
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日 時 開演時間 出 演
中止させていただきます

※中止となりました
2020年7月4日(土)・5日(日)
シャンソンの祭典
第58回 パリ祭
(NHKホール)
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