幸福を売る男

芦野 宏

3、音楽学校と卒業後

「谷間の灯」ー米軍キャンプで歌う-2

オーディションでは、「タブー」をスペイン語で、フォスターの1夢みる人」を英語で歌ったのだが、翌日バンマスから電話があって、スペシャルクラスがとれたということであった。
ランクはA・B・Cに分かれているそうだが、スペシャルは特別ランクでギャラも高いということである。
当時、私は生活のために個人教授の生徒を二〇人もとっていたので、いくらギャラのよい仕事がきてもスケジュールの合わない場合が多かった。それでも夏休みの間に、三回
ほどキャンプで仕事をした。
今度はウエスタンの伴奏ではなく、ピアノ、ギター、ドラム、ベース、それにヴァイオリンが一本という変わった編成で、将校クラブのサロンで歌わせてもらった。
ウエスタン・ランプラーズのときとは違って、将校たちは夫人同伴で静かに聴いてくれ、終わってからの柏手も日
本人とは違って大きかった。ほとんどが夜の仕事で、高収入だったが、母と二人の生活を維持するためには、月々の定収入が必要だった。