国際的な夫婦共作共演レコード-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

1、新婚旅行で三たびのパリ

国際的な夫婦共作共演レコード-3

 リーヌ・ルノーと32年ぶりのデュエット録音 東芝EMlスタジオい992・1t・4) 昭和三十六年の五月に出会ったリーグ、と私たち二組の夫婦は、あれから三〇年以上も変わらない友情の付き合いを続けていることも嬉しい。
そして、発売は奇しくもあの時と同じパリ祭を控えた季節に、今度はリーヌ・ルノーと芦野宏のデュエットCDが昔のよしみで東芝EMIから出ることになった。曲目の一つは友人、なかにし礼の作詞作曲による「知りすぎたのね」である。幸い、リーヌもこれを承諾してくれたので、国際電話やファックスを使って打ち合わせをし、平成四年(一九九二) 十一月リーヌ・ルノーがパリから文化使節として来日し、渋谷のシアター・コクーンで交流フェスティバルのレヴューショーを行ったとき、一日滞在を延長してもらい、スタジオで録音した。フランス語訳は薮内宏さんが原詩に忠実につけてくださり、「チエ・アン・セ・トロ」と題して、二人のCDは出来上がった。なんとこれは三十数年ぶりのデュエット盤となったわけである。
 もう一曲は前と同じ「いつの日かパリに」を美野春樹氏の新しいアレンジで、リーヌがむかし覚えた日本語で再び歌ってもらった。「知りすぎたのね」の仏語版はステージでは平成五年(一九九三二ハ月十一日、東京のマリオン有楽町朝日ホール)で催した私の歌手生活四〇周年記念コンサートで初めて発表し、デュエットのCDもまずまずの売れ行きのようである。また、これを踏み台にして、シャンソン志望の後輩たちが積極的に国際交流の舞台に躍り出てほしいと願っている。
私たちの新婚旅行で初めて出会ったルル・ガステは、平成七年(一九九五)一月に八八歳の高齢で亡くなられた。日本ではNHKが衛星放送で葬儀の模様を中継したが、u-ヌが泣きながら枢のそばに立ちつくしている様子を見て胸が痛んだ。私が東京から送った哀悼の言葉に対して、リーヌからの礼状は二月八日、私の手元に届いた。