NHKテレビ『くらしの窓』-4    

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

NHKテレビ『くらしの窓』-4

『くらしの窓』には「会ってみたい人」というコーナーもあった。一週に一人、リクエストによりゲストが決まり、私がインタビュアーをしていた。森繁久弥さん、淡島千景さん、丹波哲郎さんといったベテラン俳優から話題の新人まで、予備知識のメモを見ながらいろいろお尋ねするわけだが、どうも私にとってはこのコーナーがいちばん苦手であった。次のコーナーで歌になると、やっとホッとして自分の世界に戻れるのだった。
ゲストに中村メイ子さんを迎えたときのことである。彼女は抜群に頭の回転が速い女性だから、私のほうが楽なのではと、少々油断した気持ちがあったのかもしれない。いざ本番、カメラが回りだすと、メイ子さんがあまり喋ってくれないのである。私の尋ねたことに対しては的確なご返事をくださるのだが……。私は冷や汗をかきながら、その七分ぐらいのコーナーを切り抜けたことを今でも覚えている。
いつも完壁な司会をされるメイ子さんが、今度は逆の立場で私からインタビューされるということで、ご自分のお喋りを控えめにされたのだと思う。昔からの知り合いなのに、ちょっと歯車がずれて戸惑ってしまったのだ。このコーナーは一年間続いたが、私はインタビュアーに向いていないことがよくわかった。
『くらしの窓』が始まったころはカラー化が二年前から少しずつ始まっていたようだが、ほとんどの番組はモノクロであった。だからファッションやおしゃれのコーナーでは、いちいち色の説明をしなければならなかったが、それでもあのころは最先端をいく番組として注目を集めていた。
私はまだ三十代の働き盛りで、コンサート活動も全国的に展開していたので、週三本のこの番組は一目で収録しなければならなかった。午前八時に開始して一本平均五時聞かかったから、三本日が終わるのは夜の十時を過ぎていた。その間、スタッフと一緒に小さなお弁当を食べる休憩時間が三〇分ほどあるだけで、スタジオから一歩も外に出ることはできない。なにかの都合で段取りが悪いと、夜中の二時ごろまでかかることもあり、翌日は七時の飛行機で北海道公演に出かけ、終わって翌日、九州で三日間の仕事などをしたこともある。若かったし、やる気があったし、いくらつらくーーーーても会場で満員の聴衆が自分を待っていてくれると思うと、疲れを忘れた。

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日本シャンソン館
2020年 1月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

日 時
開演時間 出 演
1月2日(木) 11時~/14時~ 新春シャンソンショー 原れい子  ピアノ:江口純子
1月4日(土) 11時~/14時~ 小林美恵子    ピアノ:日野香織
1月5日(日) 11時~/14時~ 岩崎桃子      ピアノ:大美賀彰代
1月11日(土) 11時~/14時~ あみ         ピアノ:今野勝晴
1月12日(日) 11時~/14時~ 山添恵子      ピアノ:日野敦子
1月13日(月) 11時~/14時~ MIKAKO     ピアノ:安藤伸彦
1月18日(土) 11時~/14時~ フレンチカフェ ~Keiko&美鶴~
1月19日(日) 14時~ 新春・紅白 のど自慢 vol.25  ピアノ:大美賀彰代
1月25日(土) 11時~/14時~ 原れい子      ピアノ:安部なおみ
1月26日(日) 11時~/14時~ 桜井ハルコ    ピアノ:大美賀彰代