第四回日仏親善パリ・コンサート-2

 幸福を売る男
     芦野 宏

 Ⅲ 新たな旅立ち

5、パリ・コンサートをめぐつて
 
 エピローグ 「日本シャンソン館」 に託す夢

 第四回日仏親善パリ・コンサート-2

 終わってから、最上階のレセプションルームに大勢で集り、交流のひとときを過ごした。
出演した歌手たちを家庭に招いて接待したいという申し出もあったが、短い滞在期間なので果たせなかった。私が日本の真ん中から文化を発信・交信したいと考えていた、夢の第一歩を踏み出したと思っている。当日は長男の仁博が司会し、フランスの青年セリアン・ポープ君が通訳した。
 概要は、生前ルル・ガステが 「日本シャンソン館」開設にあたり、多大な協力をしてくださったことに対する感謝の気持ちをこめて、ご存命中にお招きできなかったことを悔やみ、芦野宏とその門下生たちが、この偉大な作曲家を偲ぶべく、彼の作品を中心としたコンサートを開く、という主旨を伝えた。コンサートの規模は小さかったけれど、じつに充実した、約一時間のショーであった。生徒たちも精いっぱい歌い、練習のときより上出来だったように思う。最後に、むかしリーヌとデュエットした「モナムール」を、ご愛矯に私と妻がデュエットした。これは、ルルが私たちの新婚旅行の際お祝いに選んでくれた曲だからである。ずぶの素人である妻が一生懸命歌ったことによって、私たちの感謝の気持ちもいっそうよく伝わったのかもしれない。会場からは大きな柏手が鳴りやまなかった。
 このコンサートが成功したと感じたのは、終演後、磯村館長が海外出張で不在だったため、代理で出席してくださった副館長から「たいへん内容の充実したコンサートでした。このようなコンサートなら、来年もまた企画してください」とおほめの言葉をいただいたからである。