第四回日仏親善パリ・コンサート-1

 幸福を売る男
     芦野 宏

 Ⅲ 新たな旅立ち

5、パリ・コンサートをめぐつて
 
 エピローグ 「日本シャンソン館」 に託す夢

 第四回日仏親善パリ・コンサート-1

 財団法人羽鳥文化振興財団として平成七年七月に発足した「日本シャンソン館」は、日本の真ん中、渋川を文化の発信地としてその輪を広げていくことを理想としているが、私は多くの方々の多大な励ましのお心によって支えられ、勇気づけられている。
 館内に収蔵されている展示品のすべては、有志の方々から寄贈されたものであり、いくら金銭を積んでも買い求めることのできない貴重なものばかりである。イヴ・モンタンやエディット・ピアフの身に着けていた遺品、モーリス・シュヴァリエの自筆の手紙、数千枚にのぼるレコードや楽譜、ポスターなど、私はいったいどのようにしてお礼を申し上げればよいのだろう。
ここにあるあらゆるものは、善意と好意によって光り輝いている。
 今度は私が皆さんへなんらかのかたちでお返ししなければならない立場にあるのだ。そこで私は、その一つとして、四〇年間、多忙のあまり忘れていた「教えること」を思い立ったのである。つまり生徒に歌を教えることである。一か月に一度、館内のシャンソニエでシャンソン教室をもつことにした。四〇年来のお付き合いである作曲家の佐々木準氏に協力してもらって、県内のシャンソン愛好者を対象にした。一人三〇分だけの個人指導であるが、めきめき効果が表れ、県外や東京からも集まってきた。そのなかから私と佐々木氏の採点上位七名を選んで、本場でその成果を確かめようというねらいもあった。
 昨年はフランスにおける「日本年」、今年(平成十年)は日本における「フランス年」である。コンサートを開き、民間レベルでの交流を図りたい。ごく普通の家庭の主婦がフランスの
シャンソンを勉強し、パリで発表することは意義のあることと信じる私は、パリ日本文化会館の磯村館長のお許しを得て、五月十五日の夜、日仏友好の親善コンサートを開催した。結果は予想以上の成果を収めたと自負している。曲目を故ルル・ガステの作品に限ったこともよかったと思う。夫人のリーヌ・ルノーも、ご母堂を伴って会場に現れ、涙を流して感激してくれた。