リオで骨休め-2

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅱ 夢のような歌ひとすじ

4、世界一周と海外録音

リオで骨休め-2

 貧し気な集落に近づいていくのである。リオの山の上にはこの国の舞踊音楽サンバの学校があり、あの華やかなカ-ニバルの踊りは山の上で練習するとか聞いていたので、もっと上まで行かったが、もう車も登れないような地面になっていて、引き返すことにした。コパカバーホテルに戻って支配人に尋ねてみたところ、リオデジャネイロは高いところほど水の傾が、貧しい人がみな山の上に追いやられるのだという。山の1ではよく犯罪が起きて、観光被害にあうのだとも聞いて、背筋が寒くなった。そういえば、シャルル・トレネのシャン「リオの春」のなかでも美しい海と空が主題になっており、遠景に見える緑の山は眺めているだけのほうがよいのだということに気がついた。
リオデジャネイロは世界三大美港(夜景)の一つとされているだけに、空からの眺めはじつに素晴しく、トレネの名曲「リオの春」の美しいメロディーが、何回も私の心の中によみがぇってきて思わず口ずさんでしまう。到着したときの昼の海と違って、いま飛び立とうとする夕暮れの海もまた素晴らしく、数えきれないイルミネノンヨンがともされ、おとぎの世界にいるような気分だった。
リオデジャネイロ空港をあとにしてブラジリアで給油し、一路大西洋を横断して北半球の回へ向かうことになる。北半球の片隅に位置する国・日本で生まれた私にとって、地球裏側の国々で体験した貴重な経験は忘れることができない。
ここから一気にパリのオルリー空港へ直行する夜行便は、当時ジェット機が運航されていない時代だったから、18時間くらいかかったと記憶している。ファーストクラスは足が伸ばせてほとんど水平になって寝られたのでだいぶ助かったたものの、秋たけなわの南米から早春のヨーロッパへへ一日のうちに飛んでしまうのだから、少々体調がおかしくなっても不思議ではない。