5、パリ・コンサートをめぐつて-2

幸福を売る男

       芦野 宏

 Ⅲ 新たな旅立ち

5、パリ・コンサートをめぐつて-2

 日仏親善パリ・コンサート-1

 昭和五十七年(一九八二)八月二十四日、パリはヴァカンスのさなかに、私はあえて自分のコンサートを開いた。子供たちが学校の夏休みを利用できるからである。初めに考えていたプライベートなミニ・コンサートは、しだいに本格的な国際親善コンサートに変わっていく。たまたまこの年は七月十四日に東京都とパリ市が友好都市提携の協定を結んだ記念すべき年だっ
たので、日仏友好の親善コンサートにしたらどうだろうという案が生まれ、私は東京都知事・鈴木俊一氏のメッセージを携えてパリ市長ジャック・シラク氏にお届けする役目を果たすことになった。
 もともと自分勝手に日取りを決めて、われわれの都合のよい夏休みを選んだのだから仕方のないことだが、パリはほとんどの人たちがヴァカンスに出かけて昏守になり、街は観光客ばかりになる季節である。招待したいフランス人は大半が不在であった。シラク市長も不在で、副市長が出席され、私が携えたメッセージは無事、市長に手渡されることになったのだが、日本の全権大使・内田宏ご夫妻は万障繰り合わせてご出席くださることになり、このときの友好コンサートを重みのあるものしてくださったことには、心から感謝している。
 フランス側からフルート奏者とピアニストの演奏があり、南仏からイヴェット・ジローご夫妻、パリからリーヌ・ルノー、松島みえさん(故人)からご紹介された歌手ミシェル・ベルガムも出席してくださり、パリのインターコンチネンタル・ホテルで行われたディナーコンサートは盛り上がった。日本から同行した「芦の会」の皆さんも大喜びで、こんな楽しいコンサートなら、ほかの会員たちも誘って、また来たいという要望が多かった。
 「芦の会」というのは、前にもふれたように、デビュー後まもなく発足した私の後援会で、長らく松屋百貨店創業家の実業家・古屋冨一郎氏(故人)が会長を務められた。古屋さんはベース奏者として、ご子息の浩吉氏(現・松尾専務)はマンドリンでもって私の伴奏というお付き合いもある。たちまち全国に支部が増えて、「日本平の会」という大組織をもつ松島壮・みぇ夫妻が主宰する静岡、プロローグに掲げた「歌から歌へ」など貴重な新曲をたくさん紹介してくれた堀内一彦氏の山梨、少し先輩で、なぜか性格も趣味嗜好も似ている吉貴吉男氏の広島ほか、各地の「芦の会」がディナーショーやコンサートを開いてくださる。今、会をとりまと
めているのは、田中宏和さんのあとを引き継いだ藤村知弘氏である。このパリ・コンサートの企何と実現は藤村さん、そして彼の友人で当時パリ在住だった服部紀一郎・ピ
レット夫妻のご尽力によるところが大きい。

 --------
シャンソンライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。

※中止となりました
2020年7月4日(土)・5日(日)
シャンソンの祭典
第58回 パリ祭 
(NHKホール)
※中止となりました
時間:16時15分開場 17時00分開演
会場:NHKホール
主催:パリ祭実行委員会、一般社団法人 日本シャンソン協会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
公益財団法人 日仏会館
--------------------