住宅ストレス-2

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ

住宅ストレス-2

狭き家に家族多きは福来たり繁栄疑いなし

たったひとりの家探し!

 水筒と弁当持参での郊外通いが休日毎にスタートした。始めの頃は家族同伴ピクニック気分で希望に満ちていたが、妻のBさんも、息子も娘もやがて脱落、Aさんは休日毎に約一年、いまも新築現場めぐり、土地めぐりをしているが、一向に購入決断の気配がないという。そしてAさんは疲れ切っている。都心から三十キロ圏内はすでにパス、予算面で四十キロ圏内に足をのばしていたが、それもかなり弱気。Aさんの頭の中の首都圏マップは五十キロ地点まで広がりつつあった。
すぐにでも新居移転と考えて百論を出しつくし。引っ越しの心構えと荷作り準備を始めていた家族の思惑や苦情にも馬耳東風、便利がよくて、環境がよくて、住みやすくて、購入時安価で将来値上がり抜群、そんな住居を求めてAさんは今日もひとり行く。
しかも、家族のストレスは一日毎に高まっていて、近所からは、嫌味なのか引っ越し祝いすら届いている。親類中にも新居移転近しの報が行き渡っていて、毎週のように家探しに出かけるAさんの挙動すら疑われ始めているとか。
まず予算があって、希望敷地面積があって、都心からの通勤時間、子供達の将来の通学時間があって、眺望、隣人予測、土地相、家相と問題点は限りなく存在し、Aさんは妥協しようともしない。
「早く決断して下さいよ」
と、妻のBさんが催促したのが悪かったのか、Aさんは休暇をとって出歩き始めた。Aさんの手作りマップはメモ書きでいっぱい、こうなるとピクニック気分どころか、職場への出勤風景と何ら変りはない。
やがてAさんは胃痛を訴えるようになり、顔色も冴えなくなった。
労働省のある関係団体がサラリーマン六万人を対象に調査した「ストレス報告書」によると、胃かいよう、腰痛、高血圧症、円形脱毛症、性的不能などストレス関連の病気にかかった人は約二十人に一人におよぶとか。
ストレスの原因を過労としているのは、働き蜂人種の特長として無理もないが、精神的に弱くなっているのか、基礎体力が欠けているのか、会社の圧力、家族の圧力に耐え切れないのか、とくに管理職の病欠の原因のほとんどがストレスを引き金としているのが気になる。