お金ストレス-3

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!

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花見正樹のストレス・エッセイ

お金ストレス-3

 年の瀬も近いある日、電話で予約して一人の男が訪ねて来た。
年齢四十三歳、後厄でツキもすっかり落ちきったのか、ゲッソリとやつれた頼。一言しゃべるたびに口元が緊張して引きつるありさま。貧乏神と厄病神が右肩と左肩にしっかりとしがみ
っいていて離れそうもない哀れな表情。聞くとまあ、語るも涙、聞くも涙の作り話めいた筋書。私は至極まじめに応対してはいた。一応例のごとく仮にA氏という。
A氏は石油会社の人事部次長。中途入社組だが、まずは並の出世コースと見受けられる。前歴は信用金庫に勤めていて、外交先で知り合った女性と熱烈な恋愛で結婚、一緒になって二男一女をもうけ三児の父。 家事、育児すべてダメ、三食昼寝と夜の仕事だけはミッチリ要求という上に浪費ぐせのある女房に、給料の少ないのをグチられながらの毎日で無趣味な働き蜂人間のA氏は酒の味を知り、夜の賑わいを知り、ついに競馬競輪、特殊浴場、サラ金まで得意先となる始末。
それではならじと一念発起してゴルフを始めたが、これも以外に出費が多く、こり始めたらキリがなく、さらにゴルフには初心者に不利なチョコレートなる小バクチがあり、毎回これで大きなダメージ、いよいよ首がまわらなくなるばかり。
経済的困難からの精神的重圧からか夜の生活もついにダウン。奥さんからは浮気を疑われゴルフ場にまでアリバイ工作有無の問い合せ。同僚からも蔑視の眼で見られるばかりで、ついに結婚以来、尻に敷かれて耐えぬいて来た我慢の限界がドカーンと爆発、とたんに離婚話となる。
相談の内容は以上の如くだが、原因は「お金」である。A氏の収入はまず中流の下、さほど低くはない。A民夫人の浪費ぐせは中流の上、そこですでに収支のギャップがある。
A氏の遊興費は家計から出ないから、サラ金頼み。臨時収入で返済するつもりがギャンブルの収入など、全くあてにならないのは諸氏諸兄先刻ご承知の通り、そこでずるずる深みに入ってゆくだけになる。