有閑ストレス-2

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ

有閑ストレス-2

 そもそも、人間は古来から活動的で遊び好きだったはずだ。男達はマンモスや小動物を落し穴に追いこみ、食糧を確保すると、あとは動物の頭骨をボールにして サッカーまがいのゲームをしていたり、女の尻を追いまわしていた、とギャートルズの漫画にも記されている。
時代は下って昭和の御代(みよ)、ロック、プロレス、プロ野球、スキーにサーフィン、競馬にパチンコ、遊びの種はつきないものだ。
暇があればあれもできる、これもできる。
とにかく暇と金さえあれば鬼に金棒、恐いものなしである。飲む、打つ、写っ、自由気ままな生活が待っていると、考える。
が、現実はそうならないから不思議。まず、暇な時間ができても、一度にあれこれはできっこない。そこで選択をせまられることになる。
ところがどっこい、暇ができたらあれこれしたい、映画、演劇、旅行、デート、スポーツ、日曜大工……などと思うが、結局、迷うだけでなにもできず不快な欲求不満だけが残り、酒など飲んで怨歌(艶歌でも演歌でもない)をガナるのが関の山、せいぜいゴルフの打ちっ放し、パチンコ、庭いじり、雑誌めくり、テレビのチャンネルまわし、フテ寝、盛り場めぐりとなる。
さて、女性となるとそれどころではない。暇な女性は一生暇なのである。
生れてからずーつと暇な女もいる。
三十過ぎて暇だともうあせるばかり。暇をつぶすにはムキになって男社会の職場にくい込むか、なんでもいいから男を見つけて共同生活をする算段をしなければならない。
主婦は忙しい、と主婦はいう。
朝は早起き、亭主を起こし、子供の弁当作りから掃除、洗濯、買物、近所付き合い、PTA、カルチャー、夕餉の仕度、暇など皆無いとか。三食昼寝付きなどとんでもないという。
最近、無気力症状の主婦からの相談が激増している。その殆どが、生き甲斐論などから出発して、結論は、亭主以外に好きな相手ができたなどと穏やかならざる話。浮気相手を見つけるたびに人に相談し、亭主をこきおろし自分を正当化しようとは何たる魂胆、暗然たる思いがする。不安も増し自信喪失となる。
「主人に不満はないんです。とてもいい人なんです。子供にも私にも優しいし、何でもよく話を聞いてくれる人なんです」
ここで終るのなら結構なのだが、「でも、私、今のままの人生嫌なんです。なにかもっと私に合った人生があるんじゃないか、こんな生活で満足しているとダメになっちゃう、主人や子供のために人生の貴重な時間を費やすのはもったいない、もっと自分のために燃焼したいんです」
「はあ?」1
とでも答えるしかない。

それで、、勉強しようと思い立っていろいろカルチャー教室に通ってみたけれど、なにも実がないみたいで、スポーツジムも同じだし」
「で?」
「私、ジャズダンスのインストラクターの方にお会いして、私を理解して下さるのはこの人、私がいつかめぐり合う人はこの人、私はこの人と一緒になるべきだって気付いたんです」
「………」
もはや、あきれて言葉もない。
勝手にしろ、といいたいところだが、明日は我が身、その事主になり替って電話口でがなりたてる破目になる。