孤独ストレス-3

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ

孤独ストレス-3
“孤独ということは、自由と同意語である。

アイドル歌手が自殺をした。
その後を追うように各地で若い女性の自殺が続き、危険な社会現象としてマスコミでも警鐘を鳴らし連鎖は止んだ。
彼女は幼いときから歌手になりたくて必死で頑張り歌手になった。ここででまず目的は果した。
有名になりたかった。有名になった。お金も人よりは欲しかった。そうなった。愛情も欲しかった。特定の人の、愛されていると信じるひとときがあった。
だが、この男は他の女性と婚約した。彼女は裏切られ、捨てられたと思った。だから死んだ。
どうにも理解できにくい精神構造だが、それしか選択がなかったのかも知れない。
両親、身内、スタッフ、ファン、その存在はどうなるのか、その人達に囲まれていても孤独なのか。
女の孤独、男の孤独。「いい女は離婚する」という本があった。「男は離婚で磨かれる」という本もある。男も女もときには孤独を求めているのだ。しかし、孤独には耐え切れない。
とすると、人生そのものが孤独をめぐる葛藤ではないかと思えてくる。
孤独な女を措いた高橋たか子女史の 『ロンリーウーマン』の中でのせりふ。
「それでは、君は何で生きてるのか」
「死ぬ理由がないからよ」
「いい加減ないいかたをするね」
「でも本当、それがいちばん誠実な仙合だわ」
『ミスターグッドバーを探して』という映画では、ろうあ学校の女教師が、夜になると孤独に耐えられず知性と教養をかなぐり捨て、酒場に通いセックスを求めて男をあさる。
ストレスという観点からみても、孤独での人間不信、愛情飢餓、将来への不安からくる葛藤は、悩みを増幅させ消化器や自律神経に悪影響を与え、多種多彩な疾病を生む。人は孤独になると異性を求めるという。
ここからは私が開いていた結婚相談所での悩み相談、その中で三本の指に入るワースト過去、あまりに悲惨なので未だに多少の誇張や創作の混入を疑ってはみたが満更作り話ではなさそうなのでここに載せる。
ある商社勤務のOL、二十三歳。十九歳で初体験、その後、数人の男性体験あり。そして、私の結婚相談所に現れた時は28歳、彼女は付き合っている男性がいるにも関らず、孤独に耐えられないから結婚したいという。誰でもいい。男は誰でも同じだからと真面目な表情でいう。
学生時代、ウインドウショッピング中、キザっぼい男に付きまとわれたので手をふり払って洋品店に逃げこんだところ、相手が店の中まで追いかけて来た。それに気付いた店長がその男を突き出し追い返したまではいい。
その店長に心許して交際し初体験。のめりこんだところで彼には妻がいたと知る。それをなじると、彼は平然と「別れよう」。
初めての男と別れる辛さを聞いてくれた学校の先輩、すすり泣く彼女を抱えるようにラブホテルヘ。彼女はまた別の意味ですすり泣く。この人なら信頼できると彼女は信じた。
ところがこの先輩、小遣いせびりでしたい放題勝手気ままなヒモ気取り、ときには暴力もふるう。その仲が男の卒業期まで続いた。男が社会人になったとたん縁が切れた。給料取りになったのでヒモを卒業したのだ。
その後、転職で世話になった出身地の議員秘書に言葉巧みに誘われて結ばれたが彼に誠意はなく、まるで娼婦でも扱うようにしか彼女に接しない。転職先の職場にも電話が来る。自分の都合だけで彼女の住むアパートに真夜中訪れたりもする。彼女は再三絶縁を申し出るが、男は図々しく開き直って聞き入れない。
思いあまってあ職場の上司に秘密裏に相談した。さすがに上司は正義の味方、彼女の手引で男と面談、秘書の雇い主である議員の名にも傷が付くが、それでいいのかと理路整然と説得して絶縁を確約させ彼女の危機を救った。
しかし、正義の味方のはずの上司が、議員秘書との絶縁の御礼に出した条件は「一回だけの親密交際」、この一回だけが二回三回と続いてる間に彼女は考えた。こんな生活をしていたら心も身体もボロボロになってしまう。
「そうだ、結婚しよう!」
こうして彼女は私の経営する「結婚相談所でお見合いを何度か繰り返し、無事に銀行で管理職を勤める品のいい婚期遅れ男性と結婚、平凡ではあるが幸せな生活で女児を産み、一家の写真を載せた年賀状を私に送ってくる。その幸せそうな表情には過去の翳りなどどこにも見当たらない。