真に勇気ある者は死に際しても平静である。

真に勇気ある者は死に際しても平静である。

花見 正樹

勇気を精神面で表現すれば、冷静沈着さ、すなわち、いざという時の落ち着きです。
そのために日頃から心を鍛えるために禅の修行などで、緊急時でも平静さを保てるように努力します。
平静さとは、緊急時における勇気の証拠であり、勇敢な行為の表現でもあります。
勇気ある者は、常に落ち着いていて、いざという時にも冷静に最善の判断ができます。
勇気ある者は戦場の修羅場でも、最悪の状態で死に瀕した破滅的状況でも心の平静さを保っているのです。
新渡戸稲造の「武士道」にも載っている逸話があります。
初期の江戸城を築城した太田道濯は文武両道の達人でしたが、北条早雲の陰謀によって。風呂から出たところを刺客の曽我兵庫に襲われ槍で急所を刺されます。
道濯が歌の道において達人であることを知る刺客は、止めを刺す前に上の句を発します。
「かかる時こそ生命の惜しからめ」
道灌は致命傷にもひるまず息絶え絶えながら下の句を続けます。
「かねてなき身と思い知らずば」
これは「小田原北条記・巻一」に記述されている逸話で、それを新渡戸稲造は引用したのです。
そのやりとりの意味は、「このような時、どんなに命が惜しいだろう」「前もって元から存在しない自分と悟っていなかったならば」と伝えられています。
真に勇気ある者は、死に臨んでも「余裕がある」一例ですが、天災人災でいつ災難に襲われるか分からない私達も学ぶべき価値があるはずです。