嫌職ストレス-3

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ

嫌職ストレス-3

栄転で転勤、大出世?-3

「あなたに不満はいいません。どうせ親が勝手に持ちこんだ縁談です。一応義務も尽くしました。それに、ボーイフレンドとの交際はあなた以前からのものです」
「不純だ、どういう関係だ」と喚くと、「あなたとの結婚のほうが不純でした。結婚とはお互いに愛し愛されて信頼し信頼されて結ばれるべきですが、お互いに身上書と見合写真を交換しただけで選んだ親の見栄と本人の妥協、そのために親に結婚を反対されていた恋人と一時的にしろ別れたのは辛いことでした。その関係が戻ったのは、自分に正直になれたからです。これ以上は説明の要もありませんし、あなたを傷つけたくもありません」
「充分、傷ついてるよ」
「あなたは、仕事、仕事で観劇も旅行も満足にご一緒1したことがありませんでしょ、傷ついているのは私のほうです。それに赤ちゃんも欲しかったのに、あなたは思うような愛し方ができない人です。慰謝料は結構です。このまま、お別れしましょ」
震える思いで問うと、スポーツクラブ仲間のボーイフレンドも指折り数えるはどいるとか、趣味の会、同窓会、カルチャⅠ教室、さまざまなジャンルに捗ってかなり広範囲に発展している。悪びれる様子はさらさらない。
「今まで、あなた、私に質問したことあって?」
「まさか。もの静かで優しくて、手に触れただけで電気が走ったように小刻みに震えるようにして下うつむいた婚約時代、初々しい娘だとばっかり思っていたのに」
A君がぐちると、
「私は敏感で感じやすいんですから」
もはや、夢破れハートもボロボロ救いない。
恐怖と絶望の目で妻を見ると、そこには楚々として可憐で美しく恥じらう手弱女が伏し目がちに膝などを指で撫でたりしている。
「魔性の女だ」
A君はがっくりして呟く。彼は全ての女性が魔性であるのに気付いていないのだ。
結局もめた末、離婚、ひとり淋しく成田を旅立ってゆく。エリートコースの切符を手にしたとはいえ心は傷つき、仕事は手につかない。
生活環境の変化、精神的な虚脱感、感情の入る隙もない機械化された事務処理、公私のはっきりした人間関係、おきまりのノイローゼ、異常者のレッテルをはられて送り返され、ついにエリートコースからは脱落してしまった。