嫌職ストレス-1

「長寿の秘訣の第一は、ストレスを溜めないことです」
ストレス解消、病気知らずで楽しく長寿!
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花見正樹のストレス・エッセイ

嫌職ストレス-1

栄転で転勤、大出世!

世の中には仕事の好きな人もいる。
仕事が好きで好きで、仕事が食事より好きで飢え死にとか、寝るより仕事が好きで睡眠不足で永眠したとか、仕事のためなら死んでもいいと思ったとたん脳内出血で死亡。そんなバカな、という前に周囲を見渡すと、いるから不思議、古代爬虫類の生き残りのよう な点取り虫症候群の成虫が会社人間と名を変えて生存している。
例えば、一流商社勤務の知人の部下の話。
受験地獄を現役通過、一流某大学無事卒業、就職も第一志望突破で有名商社入り、なにしろ幼児時代からの超エリート。周囲によき指導者がいて、大事にされて、環境に恵まれて、その 上、あろうことか知識のつめ込みだけで聡明そうに見られたり、モテたりする。仮りにその男をA君とする。仮にといったが、知人の元部下、実在の人物である。
当然ながら縁談も四方八方から降って湧いてよりどり見どり、家柄と容姿と略歴で選んでお見合い、将来を配慮した招待客の前で派手な披露宴、結婚によって社会的信用をも得たつもりだった。これでまた、よく働くようになった。
ここまではどうやら家柄とガリ勉努力とツキに恵まれて順風満帆で挫折知らず。
さて、第二ラウンドはここからが本番です。
本番となると前戯のように知識の詰め合せだけでイイわけでもない。緩急自在、臨機応変の融通性あるテクニック、心身共に余裕が必要となる。              l
そもそも会社の組織はピラミッド型役職構成、同期入社全員同時期昇格などはあり得ない。上司の実力と力関係の影響もあるが係長補佐候補程度での昇格順位に微妙な差が同期組の問に現われ始め、自己評価と周囲の評価にズレが生じたとき、疑心暗鬼が生じる。
与えられた仕事でも参考書のあるものはパーフェクトに出来るが、知識の拠り所のないものはまったくダメ、応用力ゼロ。こんな男は多分、夫婦生活も教科書通りの余裕のない義務遂行自己満足短時間処理型と思われる。
仕事と家庭は車の両輪、どちらも順調なときは一直線に目標目がけて駆けぬけるが、どちらかが不調なときはガタガタと不協和音、仕事の不調は家庭がカバーできればいい。仕事にもよきパートナーが必要なのは当然、ひとりでは何も出来ないのだ。
エリートの欠点は、自分ひとりで何でも出来ると思いがちなことと、自分だけが人一倍優れていると信じている点、実に単純で可愛い。その知人の部下であるエリートA君に、知人の推薦もあって海外支店係長栄転の辞令が出た。いよいよ出世コースに乗れたのだ。