第十一章、武士道の克己心

DSCN5266
新渡戸稲造著、桜井桜村訳、幅雅臣装丁、えむ出版発刊、復刻版・本体5千円。
お問い合わせ。ご注文は”えむ出版企画”<mbook@cl.cilas.net>、へ。

 武士道を考えるー14

        花見 正樹

 第十一章、武士道の克己心

 この章は、武士にとって自分の感情を顔に出すことは醜いことである、と、己れに克つ我慢の心を武士道の心構えとしています。
武士が己れの苦しみや辛さを表情に出してはいけない。武士は人に勝つ前に、まず自分の心に勝たなければいけないのです。自分の不平不満や弱気を人に見せれば、他人の心の平穏を乱すことになって迷惑をかけます。このストイックな冷酷無情な雰囲気は一種の国民的性格にも思われるかも知れませんが、これはあくまでも武士道的習慣であり真の武士の姿ではありません。真の武士、真の日本人は心優しい人達なのです。新渡戸稲造は、こう説明しています。このように新渡戸稲造が英文で書いた武士道を、日本語に翻訳した櫻井鷗村の名文に触れていながら、私(花見)が勝手に簡略してここに載せていますが、実は毎回、えむ出版刊の復刻版「武士道」を読み直す度に、その格調高い文章に魅されてしばし沈黙することが度々なのです。
「されど吾人とても亦た、實にこの蒼穹の下に住める、凡ての人類と共に、哀楽の優しき情緒に感ずるの民なり。」
このような文章に触れる幸せを体感出来る週一のこの至福のひと時は、私(花見)にとって生きている喜びを噛みしめている貴重な時間でもあるのです。