ジンクスは信じるか

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ジンクスは信じるか。

黒猫が横切り、靴紐は解け、葬祭場の周りではカラスが集まっているのを見たらゾッとする。 霊柩車が通れば親指を隠し、朝出る蜘蛛は殺さない。夜は爪は切らない。夜に口笛を吹くなんてもってのほかだ。 幼い頃からどこからか教えられ、話を聞き、誰しも頭の隅にあるだろう。

私も全部信じているわけではないが、一度聞いてしまうと気になってしまうのだ。 基本的に私は怖いことが嫌いだ。 心霊番組も見れないし、お墓の周りを通るときは首がキュッとなる。 引越しをするときは「大島てるの事故物件サイト」は必ずチェックするし、T字路の突き当たりの部屋は選ばない。部屋の第一印象も大事にする。 ただ、今までの地球の歴史を紐解いてみたとしても、今生きている人よりも、圧倒的に今までに亡くなっている人の方が多いのだから、怖がるのはお門違いかもしれない、と最近は思うようになってきた。

それでも怖いものは怖いのだ。

昔、母の実家のお墓参りに行く時、口を酸っぱくして言われていたことがある。

「転んだらその場の土を舐めろ」

「来た時と帰る時と同じ入口は使うな」

前者について、子どもは困ったことになぜかすぐに走りたがるし、ふざけたがる。 特別な日、お盆などであれば、親戚もたくさん集まるし尚更だ。 お墓で走り回ったりしたら何をしでかしてしまうか分からない。 落ち着いてお参りをしてほしいという思いから、そのように言い始めたのだと思うが、これはまさに効果抜群だった。 現に私も小さい頃、駆け出そうとした瞬間、ハッとしてやめたことが何度もある。 土を舐めるなんて嫌だからだ。リスクが大きすぎる。

後者は、入口と出口は覚えなくちゃ、と強く思ったのは覚えている。 結局、物覚えの悪い私は黙って大人についていくという堅実な選択肢を選んだのだった。 それもまた思う壺だったのだろうか。

大人になってから、そういうような言い方をするのは母の実家だけだと気づいた。 土地柄なのか、ただ単に私たちがやんちゃすぎたから言い始めたことなのか。 真相は分からないが、そのようなローカルルールは全国に沢山存在しているだろう。

詳しく調べてみたい気もするが、知らない方が気にせず過ごせもするだろう。 「知らぬが仏」なのかもしれない。 いや、この言葉の意味すらも深読みしてしまうともう止まらない。熱帯夜の中、周りの空気が少し冷えた気がした。

ジンクスと言っても不吉なジンクスばかりではない。私にもある。勿論フットサルだが。ジンクスというかルーティーンの類になるのだろう。ジンクスを決めているスポーツ選手は多いはずだ。私自身はどちらかと言うとジンクス否定派なのだが。何故かと言うとジンクスに左右されてしまう気がして、出来なかった時に気持ちがぶれてしまうのではないかと考えるからだ。否定派の私がなぜ?と思うかもしれないが、勝利の為には何でもいいから縋りたいものなのだ。私の感覚的には、いつも通りにプレーする為に、という方が大きいかもしれない。そんな気持ちになるのがフットサルなのだ。

そんな私のジンクスは、勿論、秘密だ。試合を見たことがある人だったらすぐ分かるかもしれないが。

 

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