カフェ・ド・ワカバ 2

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外からピィピィと小鳥の声が聞こえだした。外を見ると空が白みだしている。

慌てて一樹が席を立つ。

「婆ちゃん、また火付けっぱなし、やかん!」

「ああ、ごめんねぇ。またやっちゃった。婆ちゃん駄目ねぇ」

最近孫に注意されることが増えた。それも同じことを何回もやってしまうもんだから困ったものだ。

5時半の孫達との朝の語らいはここ最近の習慣となった。孫の一樹は立派に社会人になり、工場で働いている。早朝勤務や、夜勤帰りの時にこうして顔を出してくれるのは婆ちゃん孝行だろう。

芽吹は大学3年生だ。流行り病も下火になり飲み会が増えたからか体重がドンと増えたようで、今年こそダイエットするんだと息巻いて年明けから早朝にランニングを始めた。ランニング前の腹拵えにでも寄ってくれるだけで嬉しいものだ。

そんなこんなで孫ふたりが揃ってこんな婆さんと朝食を共にしてくれるのはとても嬉しく、若葉自身の張り合いにもなっている。同居はしているものの、日中は会えないし夜は私が早く寝てしまうもんだから余り話す時間もない。

3人が席に着くと、最初はドーナツだけ出してあったテーブルの上も、あれもこれもと結局冷蔵庫から色んなモノを出してしまう。結局テーブルの上は盛り沢山になるのが恒例だ。とても騒がしくてとても楽しい。

「ごちそうさま!じゃあこれから一寝入りするわ!」

夜勤帰りの一樹はペロリとテーブルの上の3分の2は平らげると、しっかり洗い物もして、自分の部屋に帰って行った。

「先に風呂くらい入ればいいのにね。あー、私、ちょっと今日は、寒そうだから走るのやめようかなぁ」

「そうねぇ、また明日でいいんじゃない?」

孫に甘い私はいつも芽吹を甘やかしてしまう。

だって芽吹はそこまで太っているとは婆ちゃんの引け目なしでも思わない。だって女の子はちょっとぽちゃっとしているほうが可愛いし。

「うーん、おばあちゃんがそういうなら、そうしようかなぁ」

芽吹は欠伸をしながら、大きく伸びをした。

まだまだ1日は始まったばかりだ。

ーつづくー