カフェ・ド・ワカバ 4

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「ありがとうございました、またよろしくどうぞ」

朝の忙しい時間が終わり、客足もまばらになってきた。

「お母さん、お茶にしようよ」

娘の泰葉が若葉に声をかける。その意見には大賛成、時刻は9時になっていた。

若葉は疲れた体をマイチェアにゆっくりと沈み込ませると、口をチチチと鳴らした。するととどこからか太った猫がけだるそうに現れた。看板猫のマメだ。

マメはゆっくりと若葉に近づき、ブアンと一鳴きして定位置の若葉の膝まで軽やかに上ると、ゴロゴロとのどを鳴らして丸くなった。

「この子はどうしてこんなに太ってるのかしらねえ」

マメを愛しそうに撫で回しながら若葉は呟いた。

「お母さんが喜んで猫オヤツばっかりあげるからねえ」

あ、そうだと思い出したように泰葉が続ける。

「なんかマメ、近くの学校で福を呼ぶ招き猫って言われてるみたいよ。ほらこの前来た女の子が言っていたわ。膝に乗せて撫でさせてもらえると願いが叶うんだって」

確かにふくよかなボディと、白く輝く毛並みはさながら招き猫のようだ。

マメ、福を呼ぶなら宝くじ当ててくれえと泰葉が乱暴に撫で回すと、ブア〜ンと気が抜けたような鳴き声がした。こりゃダメだあと二人で笑っていると、カランカランとドアが開いた。

ドアを開けたのは中学生くらいの女の子で、外は寒かったのかほっぺたは赤くなっていた。

「あらあら可愛いお客さま、いらっしゃいませ。何飲む?」

若葉がマメを撫でながら尋ねる。

中学生のチハルは下を向きながら

「ミルクティーありますか」とボソボソと答えた。

チハルは俯きながらカウンターに座ると、そこで初めてハッと顔を上げて若葉を見た。正確には若葉の膝を。

「キャ!!!本当にいた!神様のネコ!」目を丸くしてチハルは声を上げた。

若葉と泰葉は顔を見合わせて、吹き出した。

ーつづくー