腹痛ラビリンス

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お腹が痛む。

早朝に目を覚まし異変に気づいた。

お腹にはキリキリとした痛みがあり、波打つように脈を打っている。

布団を被っているはずなのに足元からゾクゾクと寒気がした。

こりゃたまらんと布団から這い出し、トイレに駆け込んだ。

早朝なので布団の外はもっと寒く、布団から出たことを後悔したがそんなことはもうどうでも良い。

気づけばおでこにじっとりと脂汗をかいていた。

季節柄、急性胃腸炎が流行っていると聞く。23年前から流行り出した病もまだ留まることを知らないものだから、嫌な想像ばかりが頭を駆け巡っていく。

何か変な物を食べたか、いや、もしかしたらウィルスに感染したのか、ボーッとした頭でお腹の痛みをやり過ごすうちに、痛みの波も少しマシになって来た。

すると段々と思考もクリアになってきて、冷静に考える事ができるようになって来たようだ。

ゆっくりと思い返す。

まずは昨日食べた物からだ、、、。

「あっ」

思わず声が出た。

思ったよりも早くアッサリと答えに到達したものだから自分に呆れた。

それは私のお尻がヒリヒリとして居たことから、答えは明らかだった。

昨日の昼間、激辛カップラーメンを戸棚の奥から見つけた私はしめしめとお湯を沸かし始めた。

フットサルの試合前は避けている食べ物がある。

・お酒

・脂っこいもの

・生もの

・消化の悪い物

・食べ慣れない物

そして、【辛い物】だ。

連戦が終わり、その制限から解放された私は自由だった。

3分もそこそこに封を開け、辛味ペーストを注ぎよく混ぜ、ハフハフと頬張った。

これだこれこれとニンマリとしながら一心不乱にラーメンを啜った。麺はすぐになくなった。

無論、これで満足するほど私の胃袋はヤワではない。

カップ麺に残った汁をスープカップに移し替えた。冷蔵庫に余っていた卵を割り入れ、よく混ぜる。冷凍庫にストックしてある青ネギをたっぷりと。最後にとろけるチーズをパラパラとふり、ラップをかける。

レンジに入れ、3分。

アッツアツのスープカップを取り出すと、そこには激辛茶碗蒸しの完成だ。

真剣な顔でスプーンを引っ掴み、火傷しないよう細心の注意を払いながら頂く。

フゥッ。一息ついて背もたれにもたれかかる。

あぁ〜なんて幸せな休日の昼間だろう。

そうだった、私は数ヶ月ぶりに激辛カップラーメンを食べたのだった。

お腹の違和感の正解はなんてことない、生理現象だった。

あと5分くらいで家を出なければいけない時間が近づいているが、空気を読んだようにお腹の痛みの波はどこかにいってしまったようだ。

ヒリヒリとしたお尻を気にしながらトイレから出た私は、腹巻をして気合を入れて家を出た。

これを忘れた頃に、また辛い物を食べたくなるんだよなぁとフラフラと歩きながら私は苦笑いをした。