バアチャンと私①

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バアチャンと私①

私にはバアチャンがいる。2人とも高齢だがいつも元気だ。ボケずにシャンとしている姿にいつもこちらが元気をもらっている。

バアチャンとのエピソードで忘れられないものがある。

小学校低学年くらいだったか、一歳違いのイトコと外で遊んでいた。

ある日のお昼前だっただろうか。

日が照るなか、外でイトコとサッカーをしていた。お互い、思い思いの必殺シュートを開発しながら楽しくボールを蹴りあっていた。

そんな時、バアチャンが私達を大きな声で呼んだ。

「おい!こっちこい!」

何があったのかと、イトコと顔を見合わせ、バアチャンの元へ走って行った。

バアチャンは玄関の前で草刈りをしていたようだ。草が重なり土は掘り返されて、バアチャンは地べたに座り込んでいる。

「これ見ろ。」

バアチャンの手元を見ると、太陽の光に輝く草刈り鎌が見えた。

草刈り鎌には手のひらサイズほどの黒い物体が付いていた

よくよく見ると、それはモグラだった。バアチャンはモグラを一突きにしていた。モグラはもう死んでいた。

「あそこからな、土がモコモコモコってな、盛り上がってきたもんで、やってやったわ」

モグラ に対する画像結果なんと地面にいたところを仕留めたらしい。

イトコも私もモグラを見るのが初めてで、目を白黒させて驚いていた。

以前より、バアチャンはモグラの被害に悩まされていたらしく、バアチャンの顔は誇らしげだった。

「もう昼にするから、それ、捨ててこい」

鎌ごと渡されたものの、いとこも私もアタフタするばかりでパニック状態だった。土に捨てるとまた逃げてしまうかもしれない。ただ、どこに置いておけばいいのか迷った結果、近くのマンホールの蓋の上に置いて家の中に戻ったのであった。

お昼ご飯を食べ終わったら、どこか落ち着く場所に持って行こうといとこと話していた。

だが、ご飯を食べ終えてマンホールの所に戻るともうモグラはいなかった。

ホッとしたような残念のような複雑な気持ちになった。おそらく猫が持って行ったのではないかということだった。

時間で言うと30分くらいだが、最終的に消えてしまったこともあり、モグラとの遭遇は自分の中で更に幻のような存在になってしまった。

ただ、近くで見るモグラの手の逞しさと、ツルツルとした体毛の輝きは今でも忘れられない。土を掘るのに特化した手は分厚く、掌を外側に向け体に沿ってくっついていて、見れば見るほど人間の手のようで少し怖く感じた。あ、正しく言えばモグラの手、、、と言うか前足なんだろうか。

それよりも、バアチャンがモグラを一突きにした事実の方が私にとって忘れられない衝撃的な出来事になった。

二十数年経った今もあの時のことは色褪せずに想い出せる。

たくましいバアチャンの元でさまざまな経験をさせてもらった。そのお話はまた折をみて書こうと思う。

私もバアチャンのように逞しくてかっこいいバアチャンになりたいものだ。

モグラを一突きにするのは、まだまだ修行が足りないかもしれないが。