新選租銘々伝』郷里での啓之助-7

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新選組友の会主宰・大出俊幸
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今回は2018年6月1日発行の160号からの掲載です。

信州松代市 道中記
『新選租銘々伝』郷里での啓之助-7

稲葉春義 満里子

蓮乗寺ー佐久間家書捷寺

 真田宝物館の次の予定は、宝物館からは東の市のはずれの松代藩関係の寺町へ行く。とくに真田家菩提寺として市の代表的な長国寺があり、ここには歴代藩主の墓、重要文化財の左甚五郎の破風、狩野探幽筆画などで市の史跡寺院とい
われる。しかしわれわれはこの寺にちかい蓮乗寺へ。
さびれた感じのする正門から奥にあるのは本堂と思えたが、人影もないので、次の予定のためお寺にはあいさつは省略。
寺の右一画にくぎられて案内板とともに象山親子の墓所があった。大正十一年京都から象山、四国松山から息子の略の墓がならんで分葬された。墓前の白い菊の花にさす、ななめの太陽のひかりと、風の冷たさが身に感じたことであっ
た。とくに四国松山の無縁真の恰の墓碑と、京都の父の立派な墓碑とは対照的だったがここでは多少の大きさの違いは感じたものの、ともにならんだ親子の墓碑銘を京都、松山を思いながら調べ、カメラにおさめた。親子の墓碑銘。
・佐久間象山塔所(平成十四年九月二十七日詭べ)京都正法山妙心寺大法院(真田家菩提所) 法名 清光院仁啓守心居士 正面 象山佐久間先生墓 石面 孝子格建 左面 元治元年季七月十一日残 昭和三十年六月建立・松代市蓮乗寺(平成十四年十月三十日調べ)・佐久間象山墓 正面 象山佐久間先生墓 石面 大正十一年十月十五日 京都妙心寺内大法院より分葬ス  同墓所象山墓石側に、・息子略墓があり 正面 佐久間略君墓 石両 君誇ハ格幼名ヲ格二郎卜云フ象山佐久間先生ノ嗣子ニテ嘉永元年十一月 十一日松代二生ル明治六年伊預園松山裁判所ノ判事トナリ同十年二月二 十六日任地二於テ没ス享年三十 左面 大正十一年十月十五日 伊預園鷺谷ヨリ合葬ス 激動の幕末時代に、故郷松代から遠く、ともに別々の土地で不慮の死をとげ、-不帰の人となった父と子はようやく、故郷に帰り着いた。
清澄な空気のつめたさを感じっつ、人影もない墓前の菊の花に手をあわせる。そしてお寺の本堂らしき方にむかって一礼してこの寺をあとにした。