「免疫療法」を代表する二つのワクチン-1

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第8章 「死に方格差」を乗り切るには?

「免疫療法」を代表する二つのワクチン-1

 私は医療コンサルタントをしているので、ガン患者の方やその方の家族から、先進医療の相談を受けることがある。「少しでも長く生きたい。そのためには、現在、可能なあらゆる治療を受けたい」というのだ。
現在の日本で、ガンの先進医療というと、真っ先に 「免疫療法」が挙げられる。ガンの3大治療法は、外科治療、放射線治療、化学療法だが、これに続く第4のガン治療法として、ずっと注目され続けているのが免疫療法である。
これは、患者が元来持っている免疫力でガンの治療を行うというものだから、抗ガン剤などの化学療法や放射線治療などと違い、副作用はほとんど観察されていない。しかも、ワクチンを投与することで「ガンが消える」とされているので、ガン患者さんならたいていの人が知っている。
そのため、これを希望する患者さんはけっこう多いのだ。しかし、免疫療法を受けるには、多くの場合、専門のクリニックにおいて自由診療で受けなければならない。つまり、健康保険で認められたガン治療ではないため全額自己負担になり、その費用は高額だ。
免疫療法の歴史は意外に古く、かつてよく耳にした”丸山ワクチン″は、その代表例である。丸山ワクチンは、これを処方することによって体内のキーラーT細胞やNK細胞が活性化され、その働きでガン細胞の活動を抑制できるとして、いまも熱心な支持者が多い。故・丸山千里日本医科大学名誉教授は、戦時中、皮膚結核の治療用ワクチンを開発していたが、結核患者にはガンが少ないことに気づき、丸山ワクチンの研究開発に乗り出したというエピソードは有名である。
丸山ワクチンの投与は1964年に始まったが、いまだに厚労省は「薬効が証明されていない」と、医薬品として承認していない。