葬儀におカネをかけない「地味葬」が増加-1

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「富家孝著・SB新書「死に方」格差社会より}

第8章 「死に方格差」を乗り切るには?

葬儀におカネをかけない「地味葬」が増加-1

 エンディングノートの仕上げは、前記したように 「葬儀指示書」 である。
そこで、最近の葬式事情を調べてみると、昔とは大きく違っていることに驚かされた。
もっとも大きな違いは、最近の葬儀が簡素で地味になっていることである。つまり、日本人は葬儀におカネをかけなくなっているのだ。
こうした葬儀を最近は「地味葬」と呼び、その多くは家族だけで送る「家族葬」だという。
日本はすでに高齢者(65歳以上の人口)が全人口の20%以上という高齢社会になっているので、葬儀そのものの数は年々増加している。しかし、葬祭業の市場規模は反比例して減つているのである。なんと、2002年が市場規模のピークで、以来、毎年、市場は横ば
いか縮小を続けているという。
じっは私は、最近までこの事実を知らなかった。単純に、高齢化が進んでいるので葬祭産業の売り上げは伸びているのだろうと思っていた。それが、もう10年以上にわたって縮小しているというのだ。
「家族葬」の場合、葬祭場を借りてしたとしても、かかる費用は葬祭場の部屋代、棺代、花代、お線香代などだけだから、業者にもよるが費用は数十万円ですむ。
日比谷花壇のデータによると、全葬儀のうち、葬儀を行わず家族だけが火葬場でお別れをする「直葬」が19%、「家族葬」は57%と半分以1に達している。ひと昔前まで一般的だった50名を超える「一般葬」は21%、200名を超える「大型葬」はたった3%しかない。
日本の年間死亡者数は、1990年代は100万人に達していなかったが、2000年代に入ると100万人になり、いまは125万人である。そして今後は増え続け、2030年には161万人に達すると推測されている。
だから、葬儀施行件数も、今後30年間増加が見込まれている。ところが、データが示すのは、死亡数と葬祭産業の市場規模が一致しないということだ。