第66話 呂鞘と下駄

小美濃清明講師の略歴は上部の「プロフィール」をクリックしてください。

幕末史研究会
事務所:〒180-0006 武蔵野市中町2-21-16
FAX・O422-51-4727/電話・090-6115-8068(小美濃)
Eメール:spgh4349@adagio.ocn.ne.jp
プログアドレス:http://blogs.yahoo.co.jp/bakumatsushiken
幕末史研究会は、東京都武蔵野市を中心に1994年から活動を続けている歴史研究グループです。

6、暗殺

第66話 呂鞘と下駄

犯人の遺留品は呂()鞘と下駄といわれている。
鞘の塗は各種あって色も様々である。特に多いものは黒色である。登城用の大小は黒呂色塗の鞘が使われる。うるしで光沢がある表面が平らな塗りが呂色塗である。表面がザラザラしている仕上がりの塗は石目地塗である。その他に青貝を細かく砕いたものを混ぜたり、棕櫚★しゅろ★を細かく砕いて混ぜたりもする。
表面を松の木の皮のように塗る松皮塗、雨が降っているように見える時雨塗、氷が砕けているように見える氷砕文塗もある。
金を混ぜて輝くような派手な塗もある。
犯人の遺した鞘は、黒の呂色鞘といえば、全く特色がない鞘であり、最も多い鞘である。そこから誰の鞘と特定することは困難であると思われる。
その鞘に付けてある下緒★さげお★に特別の色のものが使用されて判別できたということであれば信憑性が高いと思われる。

下駄。遺留品の下駄に瓢の焼印が押してあったという。そうしたものを犯人がわざわざ履いて来ることが不審である。そして、それを遺留品として遺していくことが更にありえないことである。
これは犯人を特定することを攪乱★かくらん★させるために用意されたもので、初めから置いていくつもりで犯人が持参したものである。
犯人が鞘を落としていくことは考えられない。抜身の刀を持って引き上げていくようなことは幕末とはいえ、ありえない。この鞘は初めから遺留品として犯人が持参したものであろう。犯人は暗殺に使用した刀を鞘におさめて、普通に帰っていったと思われる。
犯人は龍馬と中岡の顔を知らないと言う。どちらか分からずに斬っているという説がある。
それはない。犯人はすぐに龍馬と判って斬っている。
それは床の間の刀を握った者がその家の主★あるじ★である。来訪者が床の間に刀を置くことはないのである。これは侍ならば誰でも分かる常識である。