第51話 お龍の帯留めー1

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幕末史研究会
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「坂本龍馬八十八話」

小美濃 清明

第51話 お龍の帯留-1

お龍が使っていた帯留(おびどめ)が高知で展示されたことがある。
短い期間だったが、偶然筆者は高知市にいて最終日に見ることができた。
説明板には次のように書かれていた。
一時期、龍と寝食を共にし、なついてもいた千屋家(ちやけ)の仲(なか)に、土佐を去ることになった龍はかつて龍馬が自らの下げ緒と目貫で自分に作ってくれた帯留をその身からはずし、「私にとっては今では命にも変え難いものだけれども、長い間お世話になったから、あなたにさし上げよう」と仲の手に握らせたという。
馬の妻はついに夫の故郷に馴染むことはなかったが、後日、「土佐の人々は坂本のおばさん(龍)のことをとかく言ってゐるけれども、私はあんなに良い人はまたとないと思ふ」と語った仲の存在が龍にとって大きな安らぎであったろうことは想像に難くない。
お龍の妹・君江の夫である千屋寅之助(菅野覚兵衛)の兄・千屋冨之助の娘が仲(嫁いで中城仲子)である。お龍が高知の坂本家を出て、和食村の千屋家に厄介になっていた時、お龍は仲と同じ部屋で寝食を共にしていた。
その帯留は茶色、白色、茶色と三段の縞に染められた刀の下緒に龍の目貫(めぬき)を一つ付けたものだった。
興味深かったのはその目貢であった。龍が体を丸めた形のもので、「丸龍(がんりゅう)」という目貫だった。しかも雄の龍だった。
目貫は刀の柄(つか)の部に巻き込むか、むき出しの鮫皮に貼り付けてあるものである。始まりは刀を握る掌が動かぬように、柄の凹凸をつけるために作られた部品である。
目貫は柄の表裏に使うので一対で作られている。図柄は家紋、植物、人物、道具、武器、茶道具など多種多様である。
特に多いのは十二支であり、自分の干支(えと)を好んで使う風潮がある。
動物の目貫の場合、一対の目貫を雄雌で作る場合が普通である。雄と雌の龍をどこで見分けるかというと、龍の尻尾(しっぽ)である。龍の体には鱗(うろこ)がある。その鱗が尻尾まであるのが雌である。
雄の龍には尻尾に剣が付いている。