月別アーカイブ: 2015年8月

茄子の馬 安藤久美子(やぶれ傘同人) 

茄子の馬

 茄子の馬

        安藤久美子
 朝顔に苗に支柱の大胆な

 やぶ蚊つれ庭の昼より戻りけり

 川風の闇へ花火の続けざま

 向日葵の迷路に人の沈みけり

 茄子の馬父のことはた母のこと

 渡し場は蚊帳吊草のその先に       
 
 向日葵の花に種ある重さかな

 風ふふむゑのころ草のひと処

 新涼を滝野川より王子まで

 隧道を抜け来る風や葛の花


弟切草 大島英昭(やぶれ傘同人)

弟切草

弟切草
        大島 英昭

 濃紫陽花ホームのはずれかな

 梅雨葺にあるあなきかの日の斑かな

 牛蛙日照雨止みしをころあひに

 地に這いて草引く無念無想かな

 蓮池や真昼に閉ずる土産売り

 夏の虫ども地にうじゃらうじらかな

 お稲荷の鈴凹み入る大暑かな

 たちまちに蚊のやって来る祠かな

 雨の夜の明けて弟切草の花


雲海 丑久保勲(やぶれ傘同人)

山小屋

  雲海
            丑久保 勲

 青梅雨の湯本の宿に着きにけり

 雲海の底のどこかに今朝の宿

 巻紙を抜いて扇子を開きけり

 小路からカンカン帽の京をんな

 甘酒を吹けば甘酒くぼみけり

 創業は不詳の店のうなぎかな

 水槽にラムネ商う雑貨店

 一斉にひと休みする御輿かな

 山小屋はお花畑のさらに先


雲海 丑久保勲(やぶれ傘同人)

扇子

  雲海
            丑久保 勲

 青梅雨の湯本の宿に着きにけり

 雲海の底のどこかに今朝の宿

 巻紙を抜いて扇子を開きけり

 小路からカンカン帽の京をんな

 甘酒を吹けば甘酒くぼみけり

 創業は不詳の店のうなぎかな

 水槽にラムネ商う雑貨店

 一斉にひと休みする御輿かな

 山小屋はお花畑のさらに先


風鈴 瀬島洒望(やぶれ傘同人)

風鈴 (2)

 風鈴
         瀬島 洒望

 蔵前に大八車花石榴

 枇杷実る家にて道は行き止まり

 炎天に矢印を持ち立つ男

 向日葵や曲がれば沼へ出る小道

 入れ替えにけり蚊取り器の乾電池

 側溝の蓋のがたつく大暑かな

 片蔭に売り声のしてタコ焼き屋

 風鈴の真下に金の成る木かな

 風鈴の短冊に肩触れにけり

 地図にある鳥居の印蝉時雨