月別アーカイブ: 2017年1月

グレーのステージ   高橋 禮子


グレーのステージ

高橋 禮子

 

パールグレーの海を相手にしませんか年相応のランチの誘い

アンテナに止まる烏の低きこえ地上のわれを威嚇するよう

ワイパーを力いっぱい働かせ眺めていますグレーのステージ

一瞬もとどまることない白きなみ横一線に寄せてほ返す

磯崎の磯に顔出す白亜紀の地層がこれぞ南向く岩

ひとつだ北向く岩あり人呼びて〈畜生岩〉なり白亜紀のもの

白亜紀の末に絶えたる恐竜の姿が見える波の向こうに

空の青うつしていない海のいろグレーの世代のわれらにやさし

閉ざされた車のなかにひっそりと茨城産のメロンがかおる

はつなつの雨のピリオドよく見ればアンモナイトの形している


桜にキッス  高橋 禮子

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   桜にキッス

                               高橋 禮子

 入学式を的にしたるかことしの桜四月八日の水戸の満開

 つぼみ少し残して人待つ〈お堀の桜)わがステップを若返らせる

 ああしばし人であること忘れようまあるくかろく桜にキッス

 どうせなら食べられたってよかったね人目に触れぬ蕗の茎たち

キッチンの鏡にさえも口説かれるお料理こそが力のもとだと

 ベランダに椅子のひとつを置くだけでアットホームな風がふくらむ


小さなすみれ  高橋 禮子

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  小さなすみれ

         高橋 禮子

 枯れ芝の緑は抜きやすい詠うようなりあなたのフレーズ

 引き抜いた草の根っこに力あり宙にありても土を離さぬ

 風にのりやってきました集団でうすむらさきの小さなすみれ

 ハンガーに春の喪服が揺れている君のひとよの名残のごとく

 日常にどっぷりつかる昼さがり詠まず焦らず空豆ゆでて

 あしたの講座けっせきしますというたより一関市の花泉より


ナチュラルポーズ  高橋 禮子

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 ナチュラルポーズ

        高橋 禮子

 あかね色はたえんじ色魔女たちが好みに染めるかコキアの紅葉

 人を呼びひとの心を躍らせて海辺の秋を生きているコキア

 何もかも忘れそうですくれないの丘の小径をひとりゆくとき

 全くのナチュラルポーズのほうき草葉月の朝焼け思い出させる

 月の夜は魔女も訪ねてくるだろう似合いの箒を調達せんと

 バラ園のばらはそれぞれ名前までつけてもらって個を主張する