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花見 正樹

2016年2月28日

庭の雪

春雪
            花見 正樹

 庭の梅たわみて落ちし雪音に眼ざめて想う雪国の街

 雨戸開け眺めし夜の雪景色白ばむ闇に幻想広がる

 闇の夜に白一色の雪明かり寒さ忘れてしばし佇む

 雪音に起きし夜長を幸いに幕末史調べて朝を迎えぬ

 白く舞う春近き日の雪の朝道行く人の足元危うし

 珍しき雪を丸めて投げ遊ぶ通学児童の歓声や良し

 車窓より眺めし雪も三駅ほど都心に近づき白は遠のく

 雪溶けし築地市場の日陰道 寄せ集められし白き雪塊

 春の雪夕べには溶け跡もなし人の世の儚さ想いつ車窓眺める


旧家 伊藤厚生(やぶれ傘同人)

旧家 

 旧家
           伊藤 厚生

 晩秋の西海橋の潮の渦

 朝寒やよろい戸開ける音のして

 秋澄むや富士の姿は山の上

 水涸るる側溝に沿う旧家かな

 空っ風伊豆の山々晴れわたる

 木枯らしや月が供する帰り道

 伊豆の海 島影うすき 冬の靄(もや)


海野宿 泉一九(やぶれ傘同人)

海野宿

 海野宿
         泉 一九

 コスモスの花のあるうち孫生まれ

 コスモスの木格子さする海野宿

 秋茜雲無き空をゆきにけり 

 秋大根八百屋のおやぢ背の曲がり

 アメ横の数の子売りはだみ声で

 岩陰は街騒遠く石路の花

 北風や列に遅れるランドセル


煤払い 石原健二(やぶれ傘同人)

煤払い

 煤払い
              石原 健二

 しずまれる流れにひかり十三夜

 投げて積む稲こきあとの藁の束

 バス待つ間暮れゆく空に月の冴え

 縁先の豆乾す筵(むしろ)冬日向

 雪除けの藁に日差しのわずかなる

 風花のうだつに舞へる旧街道

 笹竹で仏くすぐる煤払い


握り飯 池田よし子(やぶれ傘同人)

握り飯

握り飯
         池田よし子 

 渓近き水車の茶屋のきのこ飯

 尾根歩く秩父の空は紅葉晴

 朱の橋に銀杏黄葉の降りにけり

 小春日のベンチに子らは握り飯

 正福寺のバンダナ地蔵小六月

 雨止んで落葉のモザイク模様かな

 山門の落葉掃かれてをりにけり