箱の重さ  高橋 禮子


箱の重さ

高橋 禮子

青春の便りびっしり詰められて箱の重さは一・五キロ

読み返すレターそれぞれ三角の四角の愛をころがしている

棄てるには惜しいフレーズ五つ六つ拾いて呑めり誰も見ていぬ

とっときの箱のひとつを無に戻し生れたる空間わたしの未来

バトラーの後ろ姿に似ています沈まんとする五時の太陽

シフトチェンジのためであったら一日を内に隠りて誰とも話さぬ

ななめなる日差しを浴びん北風の洗礼受けん大樹のごとく

自が影に怯えることはないだろう烏地上に影を走らす

地に生きる植物なべて潔しいかなる風にも抗うことせず