飛行船    高橋 禮子

 
飛行船

高橋 禮子
きょうこそは遊びごころをためさんと県庁二十五階のブランチ

上空に五つ六つの飛行船ごらんのどかな雲のアピール

雪かぶる日光の山を眺めつつ哲学しているどう生きようか

こんなにも涙ぐましきことだった誰であっても生きるってことは

透き通る空間にいて眺めいる東西南北ひかるひたち野

東京が大好きだった母なのに母のひとよをふいに思いぬ

おひさまが朝な夕なに声かけるだからお山は下を向かない

ほがらなる夕日吸い込むためならん筑波は藍を深く沈める

ゆうるりと巡る目が捉えるは路上の車おとなの玩具

キャリアカー洞持つもんで後続のマーチするりと吸い込まれそう

笠小のみんなで唱えた「アブラカタブラ」子らの遊べる校庭見下ろす

高みより眺めるからこそ見えるもの限りのあらざり春夏秋冬

西日より朱いろのメール届きたりあなたまもなく六十四歳