6月に入って・・・


ひと昔前までは、6月というのは私にとって特別に思い入れのある月でした。
理由は単純で、6月1日は特殊な例を除いて全国いっせいに鮎釣りの解禁日だからです。
私は、釣り雑誌の大手・つり人社の別冊「あゆ」の常連執筆者で、下手な鮎釣り師として全国鮎河川を放浪していました。
取材を兼ねて好きな鮎釣りが出来て、漁協にも歓迎され地元の鮎釣り名手とも交流を重ね、毎年、至福の夏を過ごします。
以前は、週末になると電話一本で「オイ・オマエ」で連絡をとり、河原で待ち合わせしてテントで寝起きしたり、河原でバーベキューをしたりと、鮎釣り三昧の夏を過ごしたものです。
その夏が終わる頃、河原に真っ赤な曼珠沙華の花が咲くと、落ち鮎の季節が来て、涙して夏も鮎も終わります。
ところが、今はその習慣も崩れ去り、車で川までは行きますが鮎釣りの道具は積んでいませんので見物だけで帰ります。
なぜ、そうなったのか?
1、長い年月を共に過ごした鮎仲間が高齢化して一人減り二人減り、釣り仲間との想い出が辛いのです。
2、初夏の若鮎は小さいですから、竿も仕掛けも小鮎用の繊細なもので情緒的ですが、目が不自由だと面倒なのです。
3、白内障・緑内障・視野狭窄症で細かい目印がみ見にくくなって、繊細な釣りが苦手なのです。
4、以上の理由で長距離運転が少々苦手になっていますので、気楽に鮎河川に行けなくなったのです。
5、ふつうの鮎を釣っても楽しくないのです。
では、自分の楽しみはどこに消え去ったのか?
私の人生の三大生き甲斐は、占い、もの書き、大鮎釣り、これしかありません。
したがって、鮎釣りを引退した分けではありません。
拙著に「巨鮎に憑かれた男たち」があるのですから、そう簡単に鮎釣りから撤退は出来ません。
夏は雑魚釣りで孫と遊び、初秋からが本番です。
もう今から夢も見ますし心は弾み、激流の中に竿を出して大鮎を掛けた瞬間の衝撃、その獲物との引っ張りっこ、手元に寄せて暴れる相手を手網に入れた時の感激・・・この三つの楽しみが頭をよぎり眠れぬ夜もあるのです。
昨年は、夏のトレーニング不足が祟って、河原から崖路を歩く途中でバテました。初めての出来事で大反省です。
ホームグラウンドの球磨川(熊本県)は日本三大急流の一番手(他は富士川、最上川)ですから舐めてかかると命に拘わります。今から足腰を鍛え、今年は万全を期します。
しかも、上記5項目の欠点は、解決できるのです。
1、熊本、大分、鹿児島など各県から釣り仲間が集って毎晩、温泉と宴会です。、、と
2、竿も仕掛けも、掛かった獲物も大きいですから豪快です。
3、大きな目印でもあまり気になりませんから目の心配は半減します。
4、鹿児島空港から人まで高速バス、バスターミナルからは仲間のジープで気とまで助手席です。
5、大鮎以外はいませんので、相手が掛かれば楽しめます。
以上、今から毎日が、心も体も大鮎のための準備運動期間になり、他のことは頭にありません。なお、私の知る限り友釣りで釣り上げた大鮎の世界記録は、33センチ500グラム、釣り人は、古きよき仲間の群馬県で釣りスクール主催の野嶋玉造(がまかつテスター)名人、現認者は花見正樹・・・DVDは市販にもなっていて恥ずかしながら私の名も載っています。知人から「あんたも釣ったんかい?」と電話も来ますが、残念ながらそんな化け物みたいな大鮎が棲む激流には入れませんし、取り込む技術も自信もありません。それでも夢はみますし小説は書けます。
前述のつり人誌に掲載の「鬼棲む球磨川」、このHPの花見正樹作品集にもあります。
さて、今宵は眠れるかどうか?