オリンピックと舞姫


 今日の「男と女」は、冬季オリンピックから舞姫に飛びます。
 男性陣は金を期待できるものはもう残っていませんが、オリンピックの華、女子フィギアスケートの金メダルのチャンスが残されています・・・と、期待を込めてこの一文を書いています。
 浅田真央もショートプログラムの本番でトリプルアクセル(3回転半)を成功させ、韓国のキムヨナに次ぐ高得点を叩き出し、19歳での金メダルに向けて存在感を示して絶好調の様子ですし、安藤美姫も連続3回転を成功させて意欲満々、静かな闘志を燃やしている様子が伝わってきます。ギョロ目の鈴木明子もなかなか落ち着いていい得点を出していますから、明日のフリーに向けて三社三様に闘志を秘めていますので楽しみがいっぱいです。
 最愛の母を失い悲しみを秘めたカナダのロシェット選手のラ・クンパールシータの調べに乗った魂のこもった素晴らしい演技も、見るものの心を打ち、キムヨナ、真央に次いで3位に入ったのも納得です。
 これで、ショートプログラムでの演技は終了しましたが、韓国のキムヨナと日本の浅田真央が最右翼にいるのは間違いありません。

  話は変わりますが、昨日、私は三鷹市の親しい文芸評論家で大先輩のO先生邸にお伺いしました。
 氏の蔵書野中に丹羽文雄氏の書籍があれば頂こうという魂胆から、約束しての訪問です。JR三鷹駅前で乗ったタクシーでO先生宅の名を告げると、「ここの運転手なら誰でも知っていますよ」と言うのです。やはり、元有名大学の学長で文化勲章の栄誉を得ている著名なO先生ですからここは納得です。
 その運転手さんは、ラジオから流れるフィギアスケートの予想からの連想からか、ふと「O先生の文化講演で舞姫を聞きました」というのです。しかも、O先生の文学講演を何度も拝聴しているというのです。三鷹市は文化活動が盛んですから、そのようなこともあるとは思いますが、森鴎外の「舞姫」とは感心するばかりです。
 森鴎外の短編小説「舞姫」は、森鴎外がドイツへ留学した4年間の体験を元に執筆された実体験に近いとされる小説です。
 貧しい踊り子の美少女と、留学中の官吏である森鴎外の分身の主人公との間に起きた恋物語で、ラストは彼女を捨てて日本に帰国する官吏のやるせない思いを叙情的な文章で書き上げた名作といわれる作品ですが、私は格調高い文体から覘く主人公の利己的な冷たさと優柔不断なご都合主義が気になって、小説の読後感がスッキリしなかったのを覚えています。
 勿論、森鴎外の「高瀬舟、山椒太夫、阿部一族、即興詩人、雁」ぐらいまでは見ていますが、永井荷風ほどは傾倒できずにいました。
 ところが、ここ数年、森鴎外が晩年を過ごした上野不忍池畔の寓居後の料亭を接待などに用いるようになり、「舞姫」なる吟醸酒も口にするようになりました。
 O先生邸にお邪魔するのは、故丹羽文雄と故青山光二を偲ぶ「丹青会」本部に置く蔵書の収集なのですが、青山師の作品は私の書庫から運べばいいだけですが、青山光二師の兄貴分だった丹羽文雄氏の著作は、遅々として集まりません。私も青山作品は在庫がありますが狭い書斎ですから丹羽作品までは収納する余地はありません。しかも、私が小説を書かない異端作家なのに、故丹羽&青山の文壇での偉業を守る「丹青会」主幹の役割を誰も疑わないのです。事情は簡単、直系の弟子がいないからです。
 文化勲章にも輝き92歳で文芸賞を得てギネスに載るという大御所の青山光二師の唯一の弟分が私で、青山光二師の兄貴分が丹羽文雄師ですから「丹青会」となると仕方なく、私もこれからは小説書きに専念しなければならないのは宿命のような気もします。

 さて、オリンピックは明日に期待・・・これで、楽しみがつながりました。
 フィギアスケートに縁のない私が、なぜこの競技に興味を示すか・・・舞の美しさに魅力を感じたのは当然ですが、私の長編小説「迷走海峡」にフィギアスケートが関係しているからです。いずれ、改定してネットで連載をしますので、楽しみにお待ちください。