マリちゃん雲に乗る
宗像 善樹
(8)利絵ちゃんと華ちゃんのその後
マリちゃんが浦和の家に来たとき大学生と中学生だった利絵ちゃんと華ちゃんも、すでに三十歳を過ぎ、それぞれ浦和の家から独立して一人住まいをしています。
二人ともまだ独身ですが、利絵ちゃんは東京港区のワンルームマンションに住み、会社に勤めて活躍しています。営業の仕事で、英語がペラペラの利絵ちゃんは、外国へ出張したり、海外からのお客様を国内のあちこちへ案内したりしています。
大活躍の、大忙しの毎日です。
高校生のときに整体師になることを志望した華ちゃんは、整体の専門学校で実技と学科を勉強して、夢を実現させました。さいたま市内の整体院に勤めて夜遅くまで頑張って仕事をしています。
わたしは、「華ちゃんも、やる気になれば、すごいじゃん」と思いました。
そして、仕事が終わる時間がとても遅いので、仕事場の近くにワンルームマンションを借りて、そこへ移り住みました。浦和の家から引っ越すとき、華ちゃんは、ママのお友だちの岩本美和子さんが描いてくれたマリちゃんの油絵2枚のうちの1枚をママから貰って、大切に持っていきました。
わたしの絵が、留守中の華ちゃんの部屋をしっかり守っています。
こうして、浦和の家は、パパとママの二人だけになってしまいました。わたしは、空の上から浦和のマンションを見下ろすたびに、家族五人そろって生活をしていたあの頃を、いつも懐かしく思い出します。
マリちゃんの話が終わりました。

その担当者の人の説明は要領がよく、人柄も誠実そうなのでパパもママも信頼したようでした。パパとママは、いっそう御宿に好感を持ったようでした。
そういえば、長崎市桶屋町に住むママのおじさんの谷口勝さんが、長崎生まれの自分の奥さんのことを『うちの美子は、西太后のごたる』と言って、よく恐れ慄いていました。
ときどきママが、わたしを連れて、利絵ちゃんの生活の様子や部屋の整理の状態を見にいきます。でも、利絵ちゃんは大学生生活を謳歌していて、ママと約束した時間までにマンションに帰ってきません。待ちぼうけを食わされたママが怒ると、利絵ちゃんは、のらりくらりと言い訳をします。